最新記事

社会法則

【まんが】人間は保守的だから、80対20の法則は活用されにくいが

2016年1月19日(火)15時12分

 ジュランは1953年に、日本企業に品質改善の手ほどきをしています。そして1970年代になると、日本の製品の品質のよさは、アメリカにとって脅威となります。このことがジュランを世界的に有名にし、彼は今度はアメリカで品質改善の方法を教え始めたのでした。

コンピューターと80対20の法則

 80対20の法則にいち早く注目し、それを取り入れて大成功したのはIBMでした。IBMは1963年に、コンピューターを使う時間の約80%が、全機能のうちの約20%に集中していることに気づきました。

 そこでただちに、頻繁に使われる20%の機能がユーザーにとって使いやすくなるように、OS(基本ソフト)を書き換えたのです。このため、日頃盛んに使うアプリケーションでは、IBMのコンピューターの性能が最も高く、最も高速になりました。

 アップルやロータス、マイクロソフトなどの次世代パソコンとそのソフトを開発した新興企業も、80対20の法則を活かしてきました。それによって、製品価格が下げられたり、使い勝手がよくなったりして、ユーザーを広げていったのです。

勝者総取りの現状

 パレートが所得分布の不均衡を発見して1世紀以上がたちますが、この法則は今でも当てはまっています。1994年の映画監督のスピルバーグの年収は、1億6千5百万ドルでした。また超売れっ子の弁護士ジョセフ・ジャメイルの年収は9000万ドルでした。しかし、普通の映画監督や弁護士はその100分の1も稼いでいないのです。

 20世紀以降、所得格差を是正するために大変な努力が続けられていますが、それは失敗に終わっています。アメリカでは、1973年から95年までに平均所得は36%も上がっていますが、一般勤労者の所得は逆に14%も減っているのです。所得が増えたのは、おもに上位20%の人たちだけであって、所得の増加分の64%は所得上位1%の人たちに集中しています。

受け入れにくい80対20の法則

 80対20の法則は、受け入れにくく、実感がわきにくい側面を持っています。一般に、努力と報酬はだいたい釣り合っていて、どの消費者も、どの従業員も、どのビジネスも、どの製品も等しく重要だと考えられているのです。

 10日働けば、1日の10倍稼げる。友達はみんな等しく大切だから、同じように対応しなければならない。どの問題にもいろいろな原因があるから、ひとつやふたつの要因だけを切り離しても仕方がない。どんなことでも成功する確率はほぼ同じだから、どんなチャンスにも目を向けなければならない。私たちはこう教わってきましたし、それが民主的な社会のようにも思えています。

 利益を上げていない社員や顧客であっても、「目に見えない貢献がある」「将来的に利益を生み出す」などと考えて、対策を講じないのが普通です。そして、それが正しく道徳的であると思われがちなのです。利益を上げている社員や顧客だけを優遇することは、何か非道徳的で不公平なことのように感じられるものです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GM、インディアナ州工場で生産拡大 トランプ大統

ビジネス

アングル:日本の不動産は「まだ安い」、脱ゼロインフ

ビジネス

米モルガンSが日本特化型不動産ファンド、1000億

ワールド

中国格付け、公的債務急増見込みで「A」に引き下げ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 2
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 3
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のために持ち込んだ?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 6
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中