【まんが】人間は保守的だから、80対20の法則は活用されにくいが
ジュランは1953年に、日本企業に品質改善の手ほどきをしています。そして1970年代になると、日本の製品の品質のよさは、アメリカにとって脅威となります。このことがジュランを世界的に有名にし、彼は今度はアメリカで品質改善の方法を教え始めたのでした。
コンピューターと80対20の法則
80対20の法則にいち早く注目し、それを取り入れて大成功したのはIBMでした。IBMは1963年に、コンピューターを使う時間の約80%が、全機能のうちの約20%に集中していることに気づきました。
そこでただちに、頻繁に使われる20%の機能がユーザーにとって使いやすくなるように、OS(基本ソフト)を書き換えたのです。このため、日頃盛んに使うアプリケーションでは、IBMのコンピューターの性能が最も高く、最も高速になりました。
アップルやロータス、マイクロソフトなどの次世代パソコンとそのソフトを開発した新興企業も、80対20の法則を活かしてきました。それによって、製品価格が下げられたり、使い勝手がよくなったりして、ユーザーを広げていったのです。
勝者総取りの現状
パレートが所得分布の不均衡を発見して1世紀以上がたちますが、この法則は今でも当てはまっています。1994年の映画監督のスピルバーグの年収は、1億6千5百万ドルでした。また超売れっ子の弁護士ジョセフ・ジャメイルの年収は9000万ドルでした。しかし、普通の映画監督や弁護士はその100分の1も稼いでいないのです。
20世紀以降、所得格差を是正するために大変な努力が続けられていますが、それは失敗に終わっています。アメリカでは、1973年から95年までに平均所得は36%も上がっていますが、一般勤労者の所得は逆に14%も減っているのです。所得が増えたのは、おもに上位20%の人たちだけであって、所得の増加分の64%は所得上位1%の人たちに集中しています。
受け入れにくい80対20の法則
80対20の法則は、受け入れにくく、実感がわきにくい側面を持っています。一般に、努力と報酬はだいたい釣り合っていて、どの消費者も、どの従業員も、どのビジネスも、どの製品も等しく重要だと考えられているのです。
10日働けば、1日の10倍稼げる。友達はみんな等しく大切だから、同じように対応しなければならない。どの問題にもいろいろな原因があるから、ひとつやふたつの要因だけを切り離しても仕方がない。どんなことでも成功する確率はほぼ同じだから、どんなチャンスにも目を向けなければならない。私たちはこう教わってきましたし、それが民主的な社会のようにも思えています。
利益を上げていない社員や顧客であっても、「目に見えない貢献がある」「将来的に利益を生み出す」などと考えて、対策を講じないのが普通です。そして、それが正しく道徳的であると思われがちなのです。利益を上げている社員や顧客だけを優遇することは、何か非道徳的で不公平なことのように感じられるものです。