「クリエイティブ51、ビジネス49」をバランスさせる経営
[荒木隆司]株式会社ドワンゴ 代表取締役社長
社内の挑戦意欲の維持のためトップがなすべきことは
いま、ドワンゴはターニングポイントを迎えています。
1997年にゲーム開発の会社として生まれたドワンゴは、2000年代初頭にモバイル向けのコンテンツ配信で成長し、さらに2006年に立ち上げた「niconico」*(ニコニコ動画)を日本最大規模の動画サイトへと発展させました。
順風満帆のように見えるかもしれませんが、紆余曲折はありました。niconicoは立ち上げてしばらくは赤字続きだったんです。黒字化したのは開設から4年目ですね。黎明期から初期の発展期までは本当に収益につながらなかった。でも、ユーザーの投稿動画と生放送番組を軸とした動画コミュニティサービスは他にないユニークなもので、潜在的な価値が見込まれました。
そこで当時調子のよかったモバイルの音楽配信ビジネスで会社を支えながら、niconicoの足場を固めて事業の中核をniconicoにスイッチさせようという、そんな状況で僕が社長に就任したんです。2012年11月のことです。
いまこそ必要な"ちゃんとした"経営
当時はマネジメントが十分に機能しているとは言いがたい状態でした。例えば予定外の予算が次々と申請されて、それがどんどん通っていく。「クリエイティブな事業をやっているのだから」と、みんなが自由気ままにやっている印象でした。
大金持ちが道楽で好きなことをやるならともかく、会社なので使えるお金も限られます。もちろん、お金を使うことでそれが将来的な収益につながったり、あるいはブランド向上やマーケティングに役立つならいいのですが、もうからないことに予算を注ぎ込んだり、売上は上がっても利益がゼロという状態が続くのでは資源が配分できず、組織として立ち行かなくなります。
最初は少々無駄使いをしてもモバイルビジネスで持たせることができたけれども、中核事業にする以上はniconicoで会社が回っていかないといけません。そして今、niconicoをさらに大きく発展させることができるか、収益基盤を盤石なものとして革新的なサービスを継続的に提供していけるかどうかという分岐点にあります。ここで必要なのが"ちゃんとした"経営、すなわちマネジメントだと考えています。
経営は全体のバランスを見ないといけない。価値に見合わない過大な投資や繰り返される失敗、PDCAサイクルの不徹底などは見直すべきです。そうやって組織として当たり前の形にしていく、それがマネジメントの役割だと思っています。