ウクライナ、アルゼンチン、ベネズエラの「有毒トリオ」債が予想外の好成績
年初来のリターンが50%など劇的に高い投資収益を達成したが、アナリストは先行き不透明とバッサリ
11月30日、新興国市場で「有毒トリオ」のレッテルを貼られたウクライナ、アルゼンチン、ベネズエラ3カ国の高利回り債が今年、高い投資収益を達成している。写真は、アルゼンチン大統領選で予想外の勝利を収めた、企業寄りのマウリシオ・マクリ氏。ブエノスアイレスで22日撮影(2015年 ロイター/Ivan Alvarado)
新興国市場で「有毒トリオ」のレッテルを貼られたウクライナ、アルゼンチン、ベネズエラ3カ国の高利回り債が今年、高い投資収益を達成している。年初にこれらの債券を買う勇気があった投資家は、今頃ほくほく顔だ。
ウクライナは債務再編が好感され、アルゼンチン大統領選では企業寄りのマウリシオ・マクリ氏が予想外の勝利を収め、ベネズエラの12月の総選挙でも似たような結果が期待されている。このため投資家の3カ国に対する態度は劇的に好転した。
ウクライナ債は年初来のリターンが約50%と、世界最高。ベネズエラは28%、アルゼンチンは24%で、2位と3位だ。
最大の新興市場国債券指数、JPモルガンEMBIグローバルの上昇に対し、この3カ国は合計で65%超も寄与している。組み入れ比率は7%強にとどまるにもかかわらずだ。
ただ、問題は今後相場がどう動くかだ。
ピクテット・アセット・マネジメントの新興国市場ポートフォリオマネジャー、グイド・チャモロ氏は「リスクが高いため、これらの債券をオーバーウェートにしていた者は少なかっただろうから、多くの投資家はかなり不満を抱いている」と話す。
これほど目を見張るようなリターンが出るのは稀で、これらの不安定な国で何度も繰り返されるとは考えられないからだ。
ウクライナは8月に投資家寄りの債務再編策を発表して多くの投資家を驚かせた。しかしロシア向け債務30億ドルの問題が未解決で、東部地域で戦闘が続き、経済は厳しい景気後退に陥っている。
ソシエテ・ジェネラルの新興国市場ソブリン・クレジット・ストラテジー担当ディレクター、レジス・チャトリアー氏は「ウクライナは国際通貨基金(IMF)の支援を受けているので今はデフォルト(債務不履行)を起こさないだろうが、ファンドメンタルズはひどい」と語る。
ウクライナ債は既に、債務再編前の水準近くまで反落しており、信用保証コストも上昇を始めた。
ベネズエラの不透明感
アルゼンチン債は、同国を国際市場に復活させると誓うマクリ氏の勝利を背景に上昇した。