米利上げはなぜ世界にとって大きな問題なのか
新興国は米金利が上がって自国通貨がドルに対して弱くなれば、輸出の価格競争では有利になる。しかし、金利が低かったときにドル建て融資を受けた新興国企業は、金利負担が増えることになる。国際決済銀行(BIS)によると、今年3月末時点で、アメリカ以外の借り手(銀行を除く)のドル建て債務残高は総額9兆6000億ドルにのぼる。この状況でFRBが利上げを行えば、デフォルト(債務不履行)懸念で市場はパニックに陥るだろう。
新興国からは「いっそひと思いに」の声も
そもそも、いくら輸出競争力が高まっても、最大の買い手である中国の経済が低迷しているのでは意味がない。むしろ中国の需要減退で、鉄鉱石や石炭、原油などの商品価格は大きく値下がりしている。外貨獲得源として原材料輸出に依存している新興国にとっては、大きな打撃だ。
市場が今いちばん必要としているのは、確実性。利上げによるダメージがいちばん多いとされる新興国のほうから、さっさと利上げをしろ、という声が出ているのもそのためだ。このどっちつかずの状態に終止符を打ち、前に進みたい、というのだ。「FRBは勘違いしている。彼らの政策の不透明性こそが、混乱のいちばんの原因だ」と、インドネシア中央銀行のアディチャスワラ上級副総裁はフィナンシャル・タイムズ紙に語った。「FRBが決断を下し、利上げを数回やって止めるという方向性を市場に見せれば、状況はすぐに好転する」
だがそれは叶わぬ希望かもしれない。FRBが木曜に何かを決定すれば、それがまたFRBの次の動きについての新たな憶測を呼ぶに違いないからだ。そして、また悪循環が始まる。
From GlobalPost.com特約