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ソーシャル時代には「オンリーネス」を発揮せよ

シリコンバレーで活躍するストラテジストのニロファー・マーチャントに聞く、「組織より個人」の時代に不可欠な概念

2015年8月6日(木)19時00分
デービッド・ウッズ(Dialogue Review誌編集長) ※Dialogue Review Mar/May 2015より転載

4Max/Shutterstock

 ニロファー・マーチャントのリサーチ方法はユニークだ。世界中の人々から体験談を聞いて回っているのだ。その中でマーチャントは、"ソーシャル時代"の到来によって、価値創造の概念に注目すべき変化が起きていることに気づいた。

 マーチャントは言う。「この世界には、抱えきれないほどたくさんの課題があります。環境問題、インターネットのオープンで自由な環境を守ること、21世紀にふさわしい教育改革、医療制度の再構築など。私が追い求めているのは、このような一見解決不能にも思える難題に取り組むことを心に決めた人々の物語です。ほとんどの人は、この世の中に影響を与えることを望んでいます。世界が、自分が生まれた時よりも、確実に進化することを誰もが願っているはずです。だから私たちは、共通の目的のもとに"つながり"、共に歩んでいく必要があるのです」

 マーチャントはスタンフォード大学の講師であり、サンタクララ大学では教授として経営学を教えている。20年におよぶキャリアの中で、新興企業からフォーチュン500にランクインする大企業までを助け、勝算のない戦いにも果敢に挑んできた。彼女が助言してきた企業には、スティーブ・ジョブズ時代のアップルや、インターネット草創期のスタートアップ企業の一つであるオートデスクなども含まれる。

「現在執筆中の書籍『Onlyness: Make Your Ideas Powerful Enough to Dent the World(オンリーネス――世界に変化をもたらすアイデア強化法)』では、誰もが実際に世界に影響を与えられることを提示します。とくに有力者がバックにいなくても大丈夫。組織に所属することさえも必要ありません。協力してくれる仲間を探し出して、彼らの心の奥にある情熱を呼び起こし、心を一つにして行動させるべく、働きかければいいのです。この本はソーシャル技術に言及はしていますが、重要なのはツールではなく、人々がどうやって行動を始めるかなのです」

組織で昇進する間に情熱が失われる

 マーチャントは書籍の執筆と併行して、同じテーマでブログを書いている。ブログで、執筆の過程で浮かんだアイデアを、ブログのフォロワーたちに話し合ってもらう。そしてその内容を、ケーススタディや「生きた事例」として書籍で取り上げるつもりだ。

「スティーブ・ジョブズやネルソン・マンデラのような唯一無二の巨人ではない私たちは、つい最近まで、目標を設定し、それを手際よく追求していくためには何らかの組織(企業、軍隊、政府、教会など)に所属しなくてはなりませんでした。徐々に昇進して自分の地位を上げていき、自分の思うままに組織を動かせる力を手に入れるまで待つしかなかったのです。しかも、たとえ力を手に入れることができたとしても、その頃には情熱が失われてしまっていたり、現状を受け入れていることが多いのが現実です」

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