特別リポート:「スバル」快走の陰で軽視される外国人労働者

2015年7月29日(水)12時51分

しかし、一部の技能実習生の証言は異なる。彼らによると、仕事のことをあれこれ話すと、全員が解雇され、中国に送還される、と住み込みの管理人から警告されたという。

同社は太田市のアパートに4人の研修生を住まわせ、給与明細書によると、家賃、光熱費、食費を引いている。彼らは技能実習生になるために中国の送り出し機関に最大37万円を支払うという。彼らはいずれも匿名を希望した。

ある技能実習生は「日本人と同じ待遇を受けられないのは実に不公平だ。中国に帰って自動車工場で働かない限り、ここで覚えたことはあまり役立つと思えない」と話した。

「私たちには関係ない」

インド人のモハメッド・シャフィール・カライ氏(28)は難民申請者だが、昨年8月、スバルやホンダに自動車部品を納める池田製作所の工場でベルトコンベヤーに左手薬指の先が巻き込まれる事故にあった。

カライ氏によると、指が切断されるほどの事故だったにもかかわらず、池田製作所のマネジャーは事故後、救急車を呼ばなかった。代わりに、製作所側は派遣業者を呼び、カライ氏は病院に連れて行かれるまで、およそ30分待たされたという。

同社の総務部総務課係長だった中嶋郁夫氏は「我々は止血をし、傷口を抑えるように言った」と話す。八木貞雄総務部長は、同社が斡旋業者に連絡したことは認めたが、救急車を呼ばなかったのは緊急医療事故に該当すると思わなかったからだと説明する。その業者の到着や治療にかかった時間はわからないという。

同社によると、カライ氏の事故が起きたのは、ベルトコンベヤーについている安全ガードが何らかの理由で外れ落ちてしまったため。この事故後、同社は製造ラインの安全性を確実にする方策を講じたとしている。

カライ氏は「すごい量の血が流れ、私は『痛くてたまらない。病院に行きたい、誰かと一緒に行きたい』と伝えたが、彼らは『私たちには関係ない』というばかりだった」と話す。

(Thomas Wilson, Antoni Slodkowski and Mari Saito 翻訳編集:加藤京子、北松克朗)。

120x28 Reuters.gif

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼大手、生産の低炭素化移行進まず=環境保護団体

ビジネス

消費者態度指数11月は2カ月ぶり改善、0.2ポイン

ビジネス

英ダイレクト・ライン株価急騰、アビバの42億ドル買

ワールド

加ウラン採掘企業が対米供給加速、ロシア輸出制限で需
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖値改善の可能性も【最新研究】
  • 2
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合の被害規模は想像を絶する
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 5
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 6
    ペットの犬がヒョウに襲われ...監視カメラが記録した…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 9
    谷間が丸出し、下は穿かず? 母になったヘイリー・ビ…
  • 10
    トランプを勝たせたアメリカは馬鹿でも人種差別主義…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中