日本経済の真の課題 後半(最終回)
これはアベノミクス前の失われた10年あるいは20年と言われる現象ももたらしたが、アベノミクスにおいて、より呪文は強力になった。人々は潜在成長率の低下に目をつぶり、あるいは呪文により目をそらされ、せっせと目の前の需要、株価高騰による消費バブル需要、住宅投資前倒しによる一時的な需要、極端な円安による観光、お土産、海外投資家、消費者の需要を取り込むことに必至になり、熱狂し、それにより、ただでさえ、人口減少、労働力減少により、生産力が落ちてきており、それは将来的にさらに深刻になるにもかかわらず、将来への人への投資を怠り、そのエネルギーを目先の需要獲得に浪費してしまったのである。
皮肉なことに、潜在成長率が低下したことを補うための景気対策と目先の需要の獲得こそが、まさに潜在成長率をさらに下げることになっているのであり、デフレ脱却という呪文はまさに日本経済への呪いとして効果を発揮したのである。
我々がやるべきことは、財政出動も金融緩和も止め、将来の人への投資に多くのエネルギーと資源とカネを投入することである。それは、まず教育投資であり、生産、雇用においても、将来への投資が優先されるべきなのである。
さらに悪いことに、円安が進行したが、これは目先の観光、海外消費者の需要を生み出すだけで、日本のモノをドルベースでは40%の大安売りをして、バーゲンセールを行ったことにより生まれたモノであり、40%バーゲンは我々の不動産などの資産についても同時に起こっており、長期的には、海外の資源や企業や資産を買う力を40%削減したことになる。つまり、目先の爆買需要のために、我々の資産は40%失われたのである。したがって、日本には円高が必要なのである。