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座りっ放し勤務が寿命を縮める

2015年7月7日(火)19時04分
ジェシカ・ファージャー

■癌 乳癌と結腸癌は運動の有無に何より影響されると考えられる。アメリカの11年の研究によれば、全米で運動不足が原因で新たに乳癌に罹患したとみられる患者は年間4万9000件、結腸癌は4万3000件に上ったという。

 座ることで癌のリスクが高まる根本的なメカニズムはいまだ明らかになっていないが、研究者たちはいくつかのバイオマーカー(健康状態を判断するための指標)を発見している。例えばC反応性タンパクの数値は、長時間座っていると高くなる。こうした物質が癌の発生と何らかの関わりがあるかもしれない。

 反対に、適度な運動が抗酸化物質を増やし、フリーラジカル(活性酸素)を減らす可能性も指摘されている。フリーラジカルは、細胞やDNAにダメージを与え、老化を加速させるとされている物質だ。

立つのと座るのを半々に

 こうした研究結果が明らかになるにつれ、人気が高まっているのが「立ち机」。「座るのは大きな過ちだった。健康への悪影響は50年前から分かっていた」と、英コンサルティング会社アクティブ・ワーキングCIC設立者のギャビン・ブラッドリーは言う。「立った姿勢を基本とするか、座った姿勢を基本にするかの問題だ」

 では、1日にどのくらい立っていれば健康で働き続けられるのか。学術誌ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディスンに最近発表された研究は、勤務中に毎日少なくとも2時間は席を立ち、いずれは立つ時間を4時間以上に延長するよう呼び掛けている。

 研究を主導したチェスター大学のジョン・バックリー教授(応用運動学)らは、2時間が健康の「分岐点」になると言う。2時間を超えると、立っている時間が1時間増えるごとに病気や死亡のリスクは軽減される。

「立って仕事をすることの利点に注目が集まっている今だからこそ、いつ、どうやって実行すれば効果的なのか、実用的なガイドラインが求められている」と、バックリーは言う。

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