EU離脱後のギリシャ
通貨が紙くずになるだけではなく、民主主義が終わり、西側の安全保障も危うくなりかねない
EUに残りたい ギリシャ国旗(左)とEUの旗を掲げて国会議事堂に向かう人々 Yannis Behrakis-REUTERS
イギリスはEU(欧州連合)を離脱すべきだ、と叫ぶ人々は、EU非加盟のノルウェーやスイスを例に挙げ、EUなどなくても国家は繁栄できると主張する。
しかし、EU離脱の瀬戸際まで来ているギリシャの政治家たちは、離脱後のビジョンについて多くを語らない。
その理由は簡単だ。大半のシナリオがあまりにも暗いからだ。世界にとっても他人事ではない。EU離脱後のギリシャが辿りそうな運命を、先例になりそうな他国の例から占うと──。
トルコ
ギリシャ人は聞きたくないだろうが、彼らの宿敵トルコは、「最良のシナリオ」を提供してくれそうだ。トルコはEUの外で繁栄してきた。2012年までの10年間、トルコの経済成長率は年率5%で推移した。その後は3%まで減速したが、それでも同時期に縮小していたユーロ圏経済に比べればはるかに良い数字だ。
一人当たりGDPでは、一部のEU加盟国よりもトルコのほうが裕福だ。安定した通貨と健全財政、投資誘致政策などの上に成功を築いてきた。これらはまさに、過去半年間にわたってEUがギリシャに実行を要求し続けて果たされなかった政策だ。
ベネズエラ
ギリシャ与党の急進左派連合(SYRIZA)は、自給自足による平等主義的ユートピア国家の樹立、という夢を長く抱いてきた。北方の巨大な資本主義国家に対する社会主義政権の反発の表れ、という点ではベネズエラと同じだろう。
しかし、ギリシャにはベネズエラのような石油資源はない。それにギリシャ人には、SYRIZAが理想とする社会主義的で地味な生活のために西側の自由主義や消費至上主義を諦める気などないだろう。
ベラルーシ
EUを離脱しても、ギリシャが孤立するとは限らない。アレクシス・ツィプラス首相は6月、ロシアのサンクトペテルブルグを訪れ、両国間の歴史的・文化的な絆を強調。プーチン大統領がEUに対抗する国家連合として提唱する「ユーラシア連合」構想を高く評価した。