ギリシャ新首相を待つ神経戦の行方
中道離れが各国に波及
「今回のギリシャ総選挙で、欧州債務危機の処理に対するわが国の立場が変わることはない。債務の削減には応じられない」。フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ首相は、あえて声明を発してそう述べた。仮に新政府が従来の改革努力を続けるとしても、2月末に迫る返済期限の「数カ月の延長」に応じるのが限度だという。
しかしギリシャがユーロ圏にとどまるためには、どちらかが折れる必要がある。現実問題としては、ツィプラスが選挙公約の取り下げを強いられる可能性が高い。金利支払いの凍結や大幅な債務削減の要求などだ。
もちろん、借金まみれの南欧諸国の指導者らが過去5年間に成し得なかった離れ業にこの若き首相が成功する可能性もある。緊縮政策と構造改革こそ財政再建の道と信じるアンゲラ・メルケル独首相を説き伏せるのだ。
もちろん容易なことではない。何しろメルケルは、同じ中道右派のアントニス・サマラス前首相がいくら頼んでも、債務減免に応じてこなかった。ここで極左政権の要求に応じようものなら、よその国でも一般国民の怒りが爆発し、中道派の既成政党に見切りをつけることになろう。
現にスペイン(年内に総選挙が予定される)では、「私たちにはできる」の標語を掲げる左派新党ポデモスがSYRIZAと似たような政策を訴え、支持率で首位に立っている。
イタリアやポルトガル、フランスなどでも同じ現象が起きかねない。既成政党にはできなかった「勝利」をSYRIZAがつかむようなら、これらの国々でも反緊縮を掲げる左右の急進派が勢いを増すだろう。
ではギリシャもドイツも譲らなかったら? その場合はデフォルト(債務不履行)およびユーロ圏離脱が現実味を帯びてくる。メルケルもツィプラスも、それだけは避けたいところだ。