ギリシャ新首相を待つ神経戦の行方
国民の緊縮財政への不満を背景に総選挙で勝利したツィプラスは債権国との条件交渉を切り抜けられるか
さあ交渉だ 緊縮財政終了の公約を掲げて当選した急進左派のツィプラス新首相 Marko Djurica-Reuters
「屈辱と苦悩の5年間は終わった」。1月25日、ギリシャ総選挙で勝利を手にした急進左派連合(SYRIZA)の若き党首アレクシス・ツィプラス(40)は支持者の前で緊縮策の終焉を叫んだ。
国民の多くも同じ思いだろう。09年の欧州債務危機の発端となったギリシャでは、その後の5年間でGDPが4分の1ほど減り、行政サービスや生活の質も低下した。失業率と貧困率は今や記録的な高水準となっている。
悪いのは中道左派や右派の既成政党だ、奴らが勝手に国の借金を膨らませ、揚げ句の果てにEUの奴隷となって緊縮策を導入し、国民に犠牲を強いてきた。有権者の多くはそう考えていた。だからSYRIZAは今度の選挙で、有権者に希望のメッセージを伝えた。若さあふれるツィプラスは緊縮路線の転換を宣言し、債務の減免を勝ち取り、富裕層への課税を強化し、雇用を拡大すると宣言した。
一方で中道派の浮動票を取り込むため、NATO(北大西洋条約機構)脱退の主張は取り下げた。またユーロ圏にとどまるとも約束した(国民の70%以上もそう望んでいる)。
しかしツィプラスが選挙公約を守ろうとすればEU諸国との、とりわけ総額2400億ユーロに上るギリシャ救済策の最大の拠出元であるドイツとの衝突は避け難いだろう。
対立の火種はほかにもある。比例代表制の選挙で、SYRIZAは単独過半数に2議席足りなかった。そこで連立相手に選んだのが右派政党の独立ギリシャ人(ANEL)。だが移民や教育の問題から同性婚まで、ANELの主張はSYRIZA支持者の左派体質と相いれない。外交面でロシア寄りという点を除けば両党を結び付けるものはただ1つ。債務返済条件を再交渉し、そのためならEUとの対決も辞さないという決意だけだ。
しかしツィプラスが連立協議をまとめる前から、債権国側は返済条件の大幅緩和には応じない姿勢を示している。彼らは従来の返済計画を遵守し、緊縮政策を続けるよう求めていた。