なぜ商品価格は下がり続ける?
原油以外の商品も下落している背景には、アメリカの金融「引き締め」がある
原油だけじゃない 砂糖、大豆、プラチナの商品価格も軒並み下がっている Michael Dalder-Reuters
この半年で、原油価格は40%も下がった。石油輸入国には朗報だが、ロシアやベネズエラ、ナイジェリア等の石油輸出国にとっては悲しい話だ。要因として、アメリカのシェールガス・オイル開発を挙げる声もあれば、OPECが減産に合意できないからだという見方もある。
だが、いずれも一面的な捉え方だ。鉄をはじめ、金、銀、プラチナ、砂糖、綿、大豆など石油以外の商品価格も下がっているからだ。
実際、大半のドル建て商品価格指数は14年下半期に大きく下げている。個々の商品の価格形成にはその分野特有の要因が絡んでいるが、下落が広範囲に及んでいるとなればマクロ経済的な要因が考えられる。
例えばデフレだ。確かにいくつかの国ではインフレ率がマイナスに転じている。しかし商品価格の下落率は物価全般の下げ方を大きく上回っている。デフレ以外の要因もあるはずだ。
では、世界的な景気低迷でエネルギーや天然資源、農産物の需要が減っているせいだろうか。確かに下半期以降、多くの国で経済成長は鈍化し、GDP予測も下方修正されている。
だがアメリカという重要な例外がある。アメリカの経済成長はますます旺盛で、14年第2・第3四半期の推定成長率は年率換算で4%を超えている。ところがそのアメリカでも商品価格は下がる一方。それに対し、英エコノミスト誌が算出するユーロ建ての商品価格指数はこの1年で上昇した。下げているのはドル建ての商品価格だけなのだ。
実は国の金融政策も商品価格の動向を大きく左右している。FRBが10月に量的緩和を終了し、15年中にも短期金利の引き上げに踏み切るとみられることから、アメリカでは金融引き締めへの転換と利上げの観測が強まっている。
高金利が生む4つの流れ
ここで思い出されるのは過去のパターンだ。70年代と02〜04年、07〜08年の実質金利(インフレ調整済み)の下落は実質の商品価格の上昇を伴っていた。逆に、80年代にアメリカで実質金利が急騰した際はドル建ての商品価格が急落した。FRBがドル紙幣を増刷すれば、そのお金が商品市場に流れて価格をつり上げ、逆に金利が上がると価格は下がる。それは直感的にも理解できるが、具体的にはどうなっているのだろう。