チップがレストランを駄目にする
今度病院に行ったら、医者に聞いてみるといい。最低賃金しか保障されていなくて、残りの収入は患者からのチップが頼りだったとしたら、医療行為の質は変わるのか、と。返ってくる答えは「ノー」だろう。
むしろチップ制には問題がある。例えば白人男性がもらうチップは非白人や女性より多い傾向があり、年齢でも変化するなど、サービスの質とは関係のない差が生じる。またチップで補えるはずだとして、雇用者がウエーターの給料を最低賃金以下に設定することも多い。
にもかかわらず、チップ制を感情的に擁護するアメリカ人は多い。チップを加減できなければ、サービスの悪いウエーターを「罰する」ことができないという客もいる。そんなときは店長に話をするか、苦情メールを書けばいいだけの話だ。
こうした人たちのせいで、今のところアメリカではチップ制を支持する声のほうが大きい。だがもっと多くの企業や店が違うやり方を試すようになれば、状況は変わるかもしれない。
さほど遠くない将来に、すべてのレストランでチップが廃止され、スタッフ全員にきちんと給料を払える代金が請求されるようになるかもしれない。そうすれば、あらゆる面がうまく回るようになるのは間違いない。
© 2013, Slate
[2013年9月10日号掲載]