最新記事

テクノロジー

タブレット戦争でiPadに勝つ法

2011年10月14日(金)16時04分
ファハド・マンジュー

 アップルより完璧にというのは確かに難しい注文だ。アップルは何年もかけてモバイルOSの完成度を高めており、アマゾンが同じレベルのものを提供できるとは思えない。

 それでもアップルに対抗する方法はある。アマゾンの電子書籍端末「キンドル」の魅力の1つは、アマゾンのオンライン書店にシームレスに接続できる点だ。キンドルを開くと既にアマゾンのアカウントにつながっているので、すぐにオンライン書店で電子書籍を購入できる。新型タブレットでも、アマゾンの映画や音楽、アンドロイド用アプリのストアにすぐにアクセスできるだろう。

「キンドル」をお手本に

 もう1つは価格設定だ。アップルのライバルの大半は、価格面でiPadに勝てない。アップルは手持ち資金と自社のスケールメリットにものをいわせて、部品メーカーとうまみのある長期契約を結び、生産コストを他社よりはるかに低く抑えている。

 アマゾンがアップルより安く売る方法は2つ──より安い部品を使うことと、デジタルコンテンツの販売で生産コストの一部を回収することだ。

 この戦略はキンドルで奏功している。キンドルは採算ラインぎりぎりのようだが、アマゾンは電子書籍の売り上げで利益を上げようとしている──アップルがハードウエアで稼ぎ、専用ソフトの売り上げをプラスアルファ程度に考えているのとは対照的だ。ベゾスはIT界の安売り王として知られる。他社が値下げで対抗すると、さらに値下げする手法は、タブレットでも変わらないはずだ。

 安売り戦略はうまくいくだろうか。消費者調査では多くの人が、250ドルを切ればタブレットを買うと答えた。彼らはiPadが安くなるまで待つつもりかもしれない──ほとんどの人にとって「タブレット」といえばiPad。安ければ他社製品でも買うかどうかは分からない。

 アマゾンにとって幸いなことに、アップルは安売り市場に手を出すつもりはない(少なくとも当分は、iPadは生産するそばから売れてしまう)。となれば、アマゾンは低価格市場をかなり独占できるだろう。

 アマゾンにとっての鍵は、万能デバイスという印象を与えないよう慎重に売り込むことだ。「タブレット」と呼ぶことすら避けたほうがいい──それだけでiPadのようなものを期待させてしまう。

 理想はむしろ、キンドルにはるかに近い。アマゾンのコンテンツを消費するためのデバイス、いわば「キンドル・プラス」。きっと飛ぶように売れるはずだ。

© 2011 WashingtonPost.Newsweek Interactive Co. LLC

[2011年9月21日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中