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資源アフガンを救いに舞い降りたウォール街
4000億ドルを投じたJPモルガンの金鉱開発計画は、米政府の期待通りアフガニスタンに安定をもたらすか
復興のカギ 鉱山で安定収入が得られれば、タリバンに走る住民も減る(カブールの北170キロの炭鉱) Ahmad Masood-Reuters
米軍がアフガニスタンに侵攻した2001年以来ずっと、アメリカ政府はある希望を抱き続けてきた。アフガニスタンに眠る豊富な天然資源を採掘できれば、瀕死の経済を建て直し、アヘン依存症の国家の改革が進められる、という希望だ。
ニューヨーク・タイムズ紙は昨年、やや先走り気味にこう報じた。「アメリカはアフガニスタンで1兆ドル近い未開発の鉱床を発見した。米政府高官らによれば、これまで知られていた鉱床をはるかに凌ぐ規模で、アフガニスタン経済と、おそらくはアフガン戦争そのものまで根底から変える力を秘めている」
問題は、鉄や銅、レアアース、そして金がどれだけ埋まっていようとも、採掘して市場に出回らないかぎり、その価値はゼロだということ。戦争で荒廃し、貧困に苦しむ反米ムード一色の山岳国での採掘作業に、カネと命を賭けて挑む人が果たして存在するのだろうか。
この難行に名乗りを上げたのが、なんとウォール街だった。フォーチュン誌5月23日号によれば、大手投資銀行JPモルガンがアフガニスタンの資源開発に挑むという。
米軍もブラックホークで協力
JPモルガン・キャピタル・マーケッツのイアン・ハナム会長に同行して未来の金脈を視察したフォーチュン誌のジェームズ・バンドラー記者によれば、ハナムはアフガニスタンでの金鉱採掘のためにヨーロッパやアジア、アメリカの投資家から4000万ドルを調達している。長い歳月をかけて精製と出荷のシステムが完成した暁には、5メートルトンの金(2億ドル以上に相当)が生産できると見込まれている。
JPモルガンは自ら出資してはいないものの、このプロジェクトに多大なエネルギーを投じてきた。アフガニスタン駐留米軍のデービッド・ペトレアス司令官もハナムを精神的にサポートしており、ハナムがフォーチュンの記者を伴って採掘予定地を訪れた際には、米軍ヘリのブラックホークを自由に使わせたようだ。
ハナムの挑戦が成功し、他の投資家もアフガンの鉱山開発に乗り出すことを米軍は期待している。タリバンが協力者に支払う報酬はわずかな額とはいえ、タリバンの人材獲得の強力なツールとなっている。鉱山開発は、地元住民に安定した職と定期的な収入をもたらしタリバンから引き離す大きなチャンスだ。
JPモルガンが投資家から募った4000万ドルという金額は、アフガニスタンでは法外の巨額だが、ウォール街では小さな取引にすぎない。JPモルガンの2万5000人の社員のボーナスを合計すると、人口3000万人のアフガニスタンのGDP、170億ドルの半額以上にも達するのだから。
資源開発は慈善事業?
アメリカから遠く離れた地での小規模な投資にも関わらず、ハナムは首都カブールから80キロほど離れた採掘予定地のテープカットセレモニーに出席した。同行したバンドラー記者によれば、ハナムは「西側パワーのソフト面を体現した人物。投資家に大きな見返りをもたらしたいと願う一方で、資源開発は慈善事業だと語っている」という。
記事ではさらに、ハナムがかつてイギリス軍の特殊部隊員だったことにも触れている。彼を知る人々に言わせれば「教養が足りず、自分の富を自慢する。テーブルマナーは最悪だ」という。実際、アフガニスタン政府との交渉でも、ハマムは次第に利潤追求に走るようになり、慈善家としての顔は薄れつつある。
フォーチュンの記事は興味深い冒険談だ。だが、外国資本による鉱山開発がもたらす富が、本当にアフガニスタン国民の元に届くのだろうか。この手のプロジェクトは往々にして地元住民の期待を煽った挙句、大した利益をもたらさないもの。その結果、緊張が高まり、さらなる衝突が生まれる。
貧困に苦しむ人々の目の前で金鉱を掘るのは、ソマリアの首都モガディシュに宝石店ティファニーをオープンさせるようなもの。喉から手が出るほどカネが必要な人々が群がり争うのは避けられない。