携帯ゲーム「アングリーバード」の野望
ロビオの戦略はどうやらうまくいきそうだ。ゲーマーだけでなくたまに遊ぶだけのユーザーもこのゲームのキャラクターにはまっているし、ロビオの将来性に期待する企業から買収のオファーも殺到している。業界誌の論評も賞賛の嵐だ。(「アルフレッド・ヒッチコックの映画以来となる鳥の猛威だ」「その魅力、入念さ、たぐいまれなる才能、すべてが人を笑顔にせずにはいられない」など)
ノキアの市場シェアを脅かした
アングリーバードには強力なファンもついている。アイドルのジャスティン・ビーバーもその1人。デービッド・キャメロン英首相もiPadで楽しんでいる。米トーク番組司会者のコナン・オブライエンは宣伝広告でiPad版を見せ付けた。米NBCのバラエティー番組サタデー・ナイト・ライブはこのゲームをコントで紹介。「ウィキリークス」のジュリアン・アサンジ役が、アングリーバードにハッキングして「気立ての良い鳥」に変えてみせる、と宣言する。
このような有名人も、一般のゲームファンにはとてもかなわない。彼ら熱狂的ファンは、アングリーバードのコスプレをしたり、ゲームの中の鳥と豚との和解を本気で仲介しようとしたりしているのだから。
一方、アングリーバードに複雑な思いを抱いている人もいる。他ならぬフィンランドの人々だ。フィンランドは高い教育水準と国をあげての技術革新支援、そして巨大なハイテク産業を誇っている。だが何年もの間、この分野を独走してきたのは1つの企業。通信大手のノキアだ。ノキアの収益は一時、フィンランドのGDPの3.5%を占めていたこともある。アメリカでいえば、マクドナルドとウォルマート、シティグループを合計したくらいに相当する。
現在、ノキアがGDPに占める割合は1.6%にまで低下した。アングリーバードは、よりによってノキアの市場シェアを脅かすライバルの1つ、iPhoneによって大ヒットした。にもかかわらず、フィンランドの人々(もちろんアングリーバードのファンは山ほどいる)は、ロビオの成功が起業ブームの火付け役となることを願っている。そしてロビオ自身も、今後の大躍進を確信しているようだ。
(Slate.com特約)