最新記事

アプリ

携帯ゲーム「アングリーバード」の野望

2010年12月15日(水)18時24分
アニー・ラウリー

 ロビオの戦略はどうやらうまくいきそうだ。ゲーマーだけでなくたまに遊ぶだけのユーザーもこのゲームのキャラクターにはまっているし、ロビオの将来性に期待する企業から買収のオファーも殺到している。業界誌の論評も賞賛の嵐だ。(「アルフレッド・ヒッチコックの映画以来となる鳥の猛威だ」「その魅力、入念さ、たぐいまれなる才能、すべてが人を笑顔にせずにはいられない」など)

ノキアの市場シェアを脅かした

 アングリーバードには強力なファンもついている。アイドルのジャスティン・ビーバーもその1人。デービッド・キャメロン英首相もiPadで楽しんでいる。米トーク番組司会者のコナン・オブライエンは宣伝広告でiPad版を見せ付けた。米NBCのバラエティー番組サタデー・ナイト・ライブはこのゲームをコントで紹介。「ウィキリークス」のジュリアン・アサンジ役が、アングリーバードにハッキングして「気立ての良い鳥」に変えてみせる、と宣言する。

 このような有名人も、一般のゲームファンにはとてもかなわない。彼ら熱狂的ファンは、アングリーバードのコスプレをしたり、ゲームの中の鳥と豚との和解を本気で仲介しようとしたりしているのだから。

 一方、アングリーバードに複雑な思いを抱いている人もいる。他ならぬフィンランドの人々だ。フィンランドは高い教育水準と国をあげての技術革新支援、そして巨大なハイテク産業を誇っている。だが何年もの間、この分野を独走してきたのは1つの企業。通信大手のノキアだ。ノキアの収益は一時、フィンランドのGDPの3.5%を占めていたこともある。アメリカでいえば、マクドナルドとウォルマート、シティグループを合計したくらいに相当する。

 現在、ノキアがGDPに占める割合は1.6%にまで低下した。アングリーバードは、よりによってノキアの市場シェアを脅かすライバルの1つ、iPhoneによって大ヒットした。にもかかわらず、フィンランドの人々(もちろんアングリーバードのファンは山ほどいる)は、ロビオの成功が起業ブームの火付け役となることを願っている。そしてロビオ自身も、今後の大躍進を確信しているようだ。

Slate.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中