最新記事

テクノロジー

次世代iPhone「入手」の波紋

2010年4月20日(火)18時13分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

 アップル内部に情報源を持つと見られるブロガーのジョン・グルーバーは17日にいったん、すべてはでっち上げだと示唆した。ところが翌18日になると、「あちこちに聞いてみた」結果、「やはりこの写真はアップルから出たものだと確信するに至った。アップルも強く返却を望んでいると思う」と書いた。

 これは、電話がアップルのものだと認めるアップル流のやり方だったのだと、私は思う。同社は外界とは直接接触しない。代わりに友好的なジャーナリストに接触し、自社に有利な形で情報をリークする。アップル・ジャーナリストの世界では、グルーバーはかなりアップル寄りの人物だ。

 19日、ギズモードは話をさらに盛り上げた。写真だけでなく、電話そのものを手に入れたと言い始めたのだ。アップルの熱烈なファンであるグルーバーは、ギズモードは電話を入手するためにカネを払ったとブログに書いた。さらに「私の理解では、アップルはこの電話は紛失したのではなく盗難されたと考えている」とした。

 つまり「お前は盗品を買ったのだ。非常にやっかいな問題に巻き込まれるぞ」と、暗にギズモードを脅しているわけだ。

紛失した張本人へのおとがめは?

 ラムによれば、今のところアップルから電話の返却要請はない(その後、連絡があったと報じられた)。だが彼の見るところ、困った立場に追い込まれたのはアップルのほうだ。返却を要求すれば、それは電話が本物だと認めることになる。アップルは話題を盛り上げるために最後まですべてを秘密にしておきたい。ギズモードの主張を認めれば、新製品の話題が盛り上がらなくなる。

 かといって法的措置などで騒ぎ立てれば、ギズモードの報道にさらなる注目が集まることになる。「彼らが接触してきたら、それを記事にするだけだ」と、ラムは言う。

 電話を紛失した誰かについては、アップルからどんなお叱りを受けるか想像もつかない。昨年の夏、iPhoneを生産する中国企業フォックスコンのある技術者が自殺した。携帯電話の試作品を紛失し、フォックスコンの柄の悪い警備担当者たちから執拗な尋問と嫌がらせを受けたのが原因と言われている。

 もし本当にアップル社員が紛失したのなら、グアンタナモ米軍基地の対テロ収容所の暮らしものどかに思えるほどの虐待を受けているかもしれない!

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

TDK、今期の営業益は微増 米関税でリスクシナリオ

ビジネス

三菱電の今期、米関税で300億円コスト増 営業益は

ワールド

ECBは利下げ余地ある、トランプ氏の政策機能ぜず=

ワールド

中国が南シナ海の鉄線礁を「統制下に」と主張、フィリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中