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ルラ後のブラジル
新大統領で成長は第2ステージへ
BRICsの異端児の実力は
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「ブラジルの世紀」に大きな落とし穴
夏季五輪開催で世界の主役を張るチャンスを生かすには、意外と肝が小さく尊敬されないという欠点を直す必要がある
南米初の快挙 五輪開催決定を喜ぶリオデジャネイロ市民(コパカバーナビーチ、09年10月2日) Ricardo Moraes-Reuters
IOC(国際オリンピック委員会)は10月2日、リオデジャネイロを2016年夏季オリンピックの開催都市に決定した。シカゴや東京、マドリードを抑え、南米初のオリンピック開催を勝ち取ったブラジルでは、数十万人の市民が全国の広場や通りを埋め尽くしどんちゃん騒ぎを繰り広げた。
ブラジルにとって、これは国際舞台への遅過ぎたデビューとも言える。大国ブラジルはかつて途上国中の落第生で、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)のなかでも一番発展が遅れていた。それが今では、最も注目される新興国になった。
経済は金融危機の衝撃から回復し、中国と並んで2010年の景気回復を目指す世界経済の牽引役だ。国際金融システムの規制強化案でも、国連安全保障理事会の常任理事国に途上国を加える改革案でも、説得力を発揮してきた。ついにブラジルの時代がやって来た。
だが、ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領がいま学んでいるように、国際舞台の主役の座は初心者にはなかなか荷が重い。
ブラジルの外交政策はいつも慎重だった。だが最近は、金持ち国(ルラの言葉を借りれば「青い目と白い肌の人々」)を挑発し、「南」(途上国)の戦略パートナーや友好国には擦り寄るずっと攻撃的な外交姿勢を取り始めている。
ブラジル外交が試される場面はここ数カ月で幾度もあったが、ブラジルは新たな大国にふさわしい態度を取る代わり、しばしば逃げ腰だったり、問題に見て見ぬふりをしたりした。ブラジルに国際政治に影響を及ぼせる力があるのは明らかだ。だが、度胸のほうはどうだろう。
政変に利用された「無知で利用しやすい」国
ホンジュラス政変への対応はどうだったか。クーデターで大統領職を追われたホセ・マヌエル・セラヤが数十人の支持者を引き連れて在ホンジュラスのブラジル大使館に保護を求めた9月21日以降、陰の実力者や調停者としてのブラジル政府の威信はガタ落ちだ。
この一件はブラジルが学ぶべき教訓を教えてくれる。予測不可能な友好国を甘やかす危険性、世界に与える影響力の限度......。そして現在のところ、ブラジルにそうした責務を担う準備が整っているとは言い難い。
セラヤは単に、国際社会の圧力で国の混乱が収まるまでの安全な避難所が欲しかった。そこで、南米で言う「無知で利用しやすい者」ブラジルを利用した。ブラジルは、世界のリーダーから地域政治家の踏み台に転落した。
中南米で最も名高いブラジル外交官が、一夜にして責任逃れの声明を発表するまで追い込まれ(セルソ・アモリン外相は肩をすくめて「セラヤを受け入れる以外に選択肢はなかった」と語った)、米政府や国連に助けを求めた。
治安当局に包囲された大使館で、ブラジルの外交官とセラヤとその仲間たちが限られた食料の取り合いをしている間に、米オバマ政権は即座にこの難局を中南米の問題と突き返した。だが中南米の盟主のはずのブラジルは、主役ではなく傍観者にしか見えない。
ブラジル政府は、国際的な影響力を拡大しようという試みでもつまずいた。ルラはこの6年間で、アフリカや中南米を中心とする35カ国に大使館を開設。いずれも、国連安保理改革でブラジルを支持してくれそうな国々だ。
だが、途上国の独裁者たちを甘やかす政策は裏目に出る可能性もある。ブラジル政府はここ数カ月、スリランカや北朝鮮、コンゴ、スーダンといった強権国家の人権侵害を不問に付してきた。キューバが反体制派を弾圧し投獄していることも無視。イラン大統領選の不正疑惑とそれに続いた流血の暴動も、ルラに言わせれば、ライバルチームを応援するサッカーファン同士のけんか程度のものだ。
政府に批判的なメディアを閉鎖し、議会も最高裁も飾り物にしたベネズエラのウゴ・チャベス大統領のことも、堂々と弁護する。「ベネズエラが非民主的という具体例を1つでも挙げてほしい」と、ルラは本誌に語った。
ブラジルが国際的な巨人になることに期待を寄せる人々も、ついに批判の声を上げ始めた。「ブラジルは国連人権理事会の理事国という立場を、ぞっとするような人権侵害国を支持することに使っている」と、人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのジュリー・デリベロは言う。