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「最もクールな企業」誕生の秘密
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ジョブズ激やせの真相
やせ衰えたジョブズの姿に健康不安説が再燃。代替の利かないCEOに何かあったときアップルにそなえはあるか
トレードマークの黒のタートルネックはだぶつき、ブルージーンズはたるんで顔もやつれて見えた。アップルの創業者でCEO(最高経営責任者)のスティーブ・ジョブズ(53)が6月に講演したとき、彼のねらいは199ドルの新型iPhoneを売り込むことだった。だが講演が終わると、聴衆の話題はiPhoneと同じくらい彼の健康問題に集中した。
病気の噂は、今に始まったことではない。4年前のちょうど今ごろ、アップルはジョブズが膵臓癌と診断されたと発表した。通常は死にいたる病だ。当時ジョブズは、彼の癌は治療可能な性質のもので、手術で「完治」したと語った。
6月の講演後、ジョブズが「やせ衰えていた」ことが話題になると、アップルの広報担当者は「普通の風邪」のせいだと語った。だがこの説明は、先週あるアナリストが同社のピーター・オッペンハイマーCFO(最高財務責任者)にジョブズの健康状態について質問したときには消えうせていた。オッペンハイマーは代わりにこう答えた。「スティーブはアップルを愛している。スティーブの健康状態は個人的な問題だ」
アップルの株価はたちまち下がりはじめた。
CEOの健康状態について投資家が神経質になるのはいつものことだ。とりわけ、ジョブズのように代替が利かないと考えられている経営者の場合には。企業統治の専門家によれば、CEOは自分の病気について取締役会には知らせておく義務があるが、職務を継続している間は一般に公表する法的な義務はないという。
探偵まで雇った投資家
だが一部の専門家は、ジョブズはアップルにとってあまりに重要な存在なので、彼が病気なら株主には知る権利があると言う。「彼はアップルそのものだ」と、ゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチ前会長は先週、本誌に語った。「(その健康は)まちがいなく公的な問題だ」
健康不安説がまちがっている可能性もある。ニューヨーク・タイムズ紙は先週、ジョブズが友人に語った言葉として、体重が減ったのは消化器系の手術を受けたせいで、癌が再発したためではないと報じた。もしジョブズが深刻な病気なら、広報担当者がそれを単なる風邪と呼ぶようなことをアップルの優秀な弁護士たちが許すはずがないという見方もある。「積極的な虚偽発言」は集団訴訟の対象になりかねないと、コロンビア大学のジョン・コフィー教授(証券取引法)は言う。
それでも投資家の心配は収まらない。03年にジョブズの癌が見つかったときも、アップルが発表したのは9カ月後だった。ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、複数のヘッジファンドは探偵を雇い、ジョブズがどのくらい頻繁に医者に行くかを確かめようとしているという。
アップルの成功と一体視
「普通の風邪」から「ノーコメント」へ、アップルのコメントが急変したことに不吉さを感じる人もいる。「彼らはすでにジョブズの健康状態についてコメントした。それが今になって沈黙するのは、それ自体がある種のコメントのようなものだ」と、エール大学経営大学院のジェフリー・ソネンフェルド副学部長は言う(アップルは本誌にもコメントを拒否)。
ジョブズがこれほどアップル成功の支柱とみられていなければ、市場もこれほどいらだちはしなかっただろう。ジョブズは細部にまで口を出すタイプの経営者で、アップルのあらゆる革新に功績があるとされ、それを自らも主張してきた。その後継者に関して明確な計画を示さないことで、アップルは批判を浴びている。