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【5】ドルはもっと安くていい。
普通に考えれば、金融危機の震源地アメリカの通貨ドルは暴落してもおかしくないように思える。だが実際には、逆に強さを発揮してきた。米政府管理下で経営再建中の米保険大手AIGが史上最大の赤字を出して株価が急落した3月2日のニューヨーク市場でも、ユーロや円など主要6通貨に対するインターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数は06年4月以来の最高水準に達した。
為替の水準は本来、経済成長率や金利水準など経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)で決まる。しかしドルは、金融危機で米景気が悪化し、FRB(米連邦準備理事会)が事実上のゼロ金利を採用するなかでも買い進まれた。信用が崩壊した特殊な状況下では、頼るべき通貨は世界で通用する基軸通貨のドルしかなかったのだ。だが平時であれば、ドルはもっと安くていい。現に世界的に株価がやや持ち直した3月半ばには、投資家の不安が後退してユーロが対ドルで5週間ぶりの高値を付けた。
金融危機以降、主要通貨のなかで例外的にドルに対して高くなったのが円だ。08年8月の1ドル=110円が、年末には90円を突破した。金融機関にサブプライムローン関連の損失が少なかったことと、それまで過剰な円安の原因になっていた突出した低金利が、米欧の利下げで目立たなくなったためだ。
ドルにとっては、世界最大の約2兆ドルの外貨準備をもつ中国が、金融危機の元凶としてドル一極体制への批判を強めていることも不安材料。基軸通貨ドルに代わる国際準備通貨が創設されれば、ドルの地位はさらに低下するかもしれない。
[2009年4月15日号掲載]