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乱獲スパイラルを食い止める第3の道
海洋汚染と乱獲を防ぐため米商務長官が打ち出した大胆計画に環境保護派もビジネス界も賛同するワケ
環境保護とビジネスの落としどころを見つけるのは神業に近い。だが09年8月20日にロック米商務長官が打ち出した計画には、環境派もビジネス派も賛同しているようだ。
漁業の衰退と海洋汚染は気候変動につながり、さらなる衰退と汚染を招くという悪循環を生む。そこでロックは、北太平洋から北極海における商業漁業の拡大を制限するという思い切った手に打って出た。早ければ2010年から、氷に覆われたボーフォート海の約52万平方キロに及ぶ海域で商業漁業の拡大を禁止し、乱獲されているホッキョクダラやズワイガニなどの研究を進められるようにするという。
世界的に魚の需要は高まっているが、食用として人気のタイセイヨウマダラやクロマグロの数は、乱獲によって過去10年間で激減した。その結果、これまで氷に閉ざされていた北太平洋の海域にビジネスチャンスが生まれる可能性はある。
「気候変動で北極海の氷が解けるにつれ、北極海での商業漁業に関心が高まっている」と、ロックは言う。「アメリカはこのもろい生態系の健全性を保ちつつ、かつ持続可能な漁業を計画できる立場にある」
ロックの決断には、環境保護団体も賛同している。「北極海に生息する哺乳類など多くの種と地元社会にとって、良い意思決定を可能にする重要な一歩」だと、ピュー環境グループのマリリン・ハイマンは言う。
ビジネス界も異論はなさそうだ。一定した持続可能な供給こそが、漁業の成功のカギを握る。世界の海の多くは公海なので、ある国が漁を控えると途端に他の国々が群がるが、アメリカの管轄水域なら、その心配はないだろう。
[2009年9月 2日号掲載]