最新記事

日本で政権交代

本誌が選ぶ10大ニュース

イラン、インフル、ノーベル賞・・・
2009年最もお騒がせだったのは?

2009.12.22

ニューストピックス

日本で政権交代

8月の衆議院選挙で民主党が圧勝、アメリカと「対等」の関係を目指す鳩山由紀夫が首相に就任した

2009年12月22日(火)12時05分
横田 孝(本誌記者)


「ハトヤマは反米主義」の疑心暗鬼

NYタイムズに掲載された「鳩山論文」にワシントンで疑念噴出。 新政権への過剰な反応は同盟関係の先行きの何を占うのか

 半世紀にわたり、太平洋をまたいで盟友関係を保ってきた日本とアメリカ。両国の政府関係者が顔を合わせれば、双方は必ずといっていいほど両者の同盟関係をアメリカの対アジア政策の「礎」と持ち上げ、「世界で最も重要な二国間関係の1つ」と誇らしげに語ってきた。

 だが、この幸せに満ちた日々も終わりに近づきつつあると不安がる声が先週アメリカで噴出。これまで日米関係を築き上げてきた自民党に代わり、アメリカの対アジア外交をしばしば批判してきた民主党が政権を担うことで、欧米メディアや一部の知日派専門家らは疑心暗鬼になっている。

 騒ぎ過ぎだろう。確かにアメリカ側からすれば悪い兆候ばかりに見える。対米外交で主体的な姿勢を貫くという民主党の選挙公約は、日米の安全保障同盟を損ないかねないとの憶測を呼んだ。選挙期間中、民主党は海上自衛隊によるインド洋での給油活動の中止や、米軍普天間飛行場の移転計画の見直しについても言及した。社民党との連立交渉を進めていることも、日米外交の足かせになるとみられている。

 ホワイトハウスの記者会見で日本が話題になることはめったにないが、民主党圧勝が伝えられた翌日8月31日の会見では、日米関係が悪化するのではという趣旨の質問が記者団から飛んだ。

 米国務省も神経過敏になっているようだ。同じ日、国務省のイアン・ケリー報道官は、普天間基地の県外移設や米海兵隊のグアムへの移転問題について「再交渉するつもりはない」と、すぐさま民主党を牽制した。だが、何よりも米政府を仰天させたのは、8月27日付のニューヨーク・タイムズ(ウェブ版)に掲載された、次期首相の鳩山由紀夫代表の名前で書かれた論文の抜粋だ。

 「冷戦後の日本は、アメリカ発のグローバリズムという名の市場原理主義に翻弄され続けた」
 「冷戦後の今日までの日本社会の変貌を顧みると、グローバルエコノミーが国民経済を破壊し、市場至上主義が社会を破壊してきた過程と言っても過言ではないだろう」

 これだけを読むと、まるで反グローバリズム活動家によるヒステリックな反米論議に聞こえる。

 ワシントン・ポストは早速、9月1日付の社説で「(北朝鮮の核問題を抱える)日本政府は米政府と仲たがいすべきでない」と警告。保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のキム・ホームズ副会長は、これまで続いてきた日米間における緊密な関係の「時代は終わるかもしれない」との論評を9月3日付のワシントン・タイムズに寄稿した。

 ニューヨーク・タイムズは9月2日付の記事で、アフガニスタンの対テロ戦争などアメリカの重要な政策に対して日本が支持を後退させるのでは、という懸念がオバマ政権内で高まっていると指摘。「日米関係に劇的な変化が生じることへの恐怖が存在する」という、アメリカン・エンタープライズ研究所の対日専門家マイケル・オースリンのコメントを紹介した。

「アメリカ大好き人間」を自任

 日本で事実上初めて本格的な政権交代が起きることを考えれば、アメリカでこうした不安や憶測が飛び交うのも理解できる。

 だが、これらの憶測は見当違いもいいところだ。インド洋の給油活動をめぐる問題など、確かに日米両政府は難題に直面するだろう。とはいえ、鳩山は決してアメリカで騒がれているほど過激な人物ではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中