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日米関係
属国か対等か
長年の従属外交を脱して
「ノー」といえる関係へ
鳩山が送る辛口フレンチキス
アメリカを見限る日本の新首相の見解は的を射ている
日本の新しいファースト・カップルは、なかなか奥が深い。鳩山新首相の妻の幸は、前世で「日本人だった」トム・クルーズと親しかったという。一方、夫の由紀夫はといえば、前世はフランスのインテリかと突っ込みたくなるような振る舞いだ。
その証拠が雑誌Voice9月号に掲載された論文「私の政治哲学」だ。黒いタートルネック姿でフランス製のたばこを吹かし、パリの左岸にたむろするインテリのように、鳩山は「アメリカ主導のグローバリズム」をこき下ろした。
鳩山によれば、「道義と節度を喪失した」資本主義のなかで人間は尊厳を失い、会計項目のように扱われてきた。だが幸いにも「イラク戦争の失敗と金融危機によって」、アメリカ一極支配の時代は終わりつつあるという。
鳩山はEU(欧州連合)にならい、アジアに共通通貨を中心とする政治的共同体を創設することを提案する。また内政では国民を「市場至上主義」から守るために「友愛」の政治を行うという。
日米軍事同盟についてはどう考えるのか。鳩山によれば、日本はアメリカと中国という超大国のはざまにある。アメリカは当面重要な存在であるものの、彼の言う「東アジア版EU」にアメリカの居場所はないという見方を示す。
鳩山の論文では、日本とアメリカに共通の価値観はまったくないようだ。民主主義や人権、自由貿易にも触れていない。
この論文の要約が米メディアに掲載されると、「日本の新首相は反米的」と派手に取り上げられ、両国の外交当局者らは火消しに追われた。鳩山のコメントは前後の文脈と切り離されて掲載されたのであり、日米関係はこれまでと同じく強固だと彼らは念を押した。
とはいえ、鳩山の論文が彼の本心であることは明白だ。それに日本の政治家にしては異例の知的な語り口であることは別として、彼が特別、過激な見解を示したわけでもない。自民党の保守派から民主党の左派まで、日本の政界には同じような意見があふれている。
日米軍事同盟はもう時代遅れ
日本には米経済の将来を悲観する声は多いし、アジア通貨圏の創設は財務省の長年の夢だ。エリート層も一般国民も、アメリカ型資本主義を第二次大戦後に結ばれた「取引」の一部と見なして、渋々受け入れてきた。だが株主重視や大幅な収入格差を容認するスタイルへの不満は今もある。
第二次大戦後の取引とは次のようなものだ。アメリカは日本に核の傘と、世界一買い物好きな(しかも最新の日本製品に目がない)消費者へのアクセスを与える。その代わり日本は忠実な同盟国の役回りを果たし、ソ連圏の東の防波堤として米軍基地を受け入れる。
この取り決めは冷戦の終焉で存在意義を失ったが、その後も維持するに足る共通利益があったため手付かずのままにされてきた。ただしあくまで今までは、の話だ。