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オバマのアメリカ
チェンジを掲げた大統領は
激震の超大国をどこへ導くのか
バラク・フセイン・オバマJr.の原点
かつてのケネディと同様、世代というカードを巧みに使う若き政治家オバマ。ハワイでの誕生から大統領選出馬までの道をたどり、その知られざる素顔を見た
初の黒人大統領を目指すこの46歳の上院議員に、若き日のJFKを重ね合わせる人も少なくない。ハワイ、ジャカルタ、カリフォルニア、ニューヨーク、シカゴ……。最大のアメリカンドリームの実現に向けて突き進むオバマの政治的原点とは。
ジョン・F・ケネディが1960年の大統領選に名乗りを上げたとき、ベテラン政治家のリンドン・ジョンソンは、この若い上院議員をばかにしていた。大統領にふさわしい資質の持ち主だと信じるに足る実績を残していない、と考えたのだ(後にジョンソンはケネディの副大統領候補になる)。
確かに、上院時代は目立った活躍がなかった。それでもケネディは当時、すでに上院議員を8年間務めており、それ以前は6年間にわたり下院議員の職にあった。
ジョンソンが存命だったら、バラク・オバマをどんな辛辣な言葉で評しただろうか。なにしろ、オバマの上院議員歴はわずか3年。しかもこの1年間は、大統領選の選挙運動にほぼ終始してきた。
しかし、実績や経験の不足をとやかく言うのは的外れらしい。オバマは今、民主党の大統領候補指名レースでヒラリー・クリントン上院議員と接戦を繰り広げており、初戦のアイオワ州で勝った後、ニューハンプシャー州とネバダ州は落としたものの、1月26日のサウスカロライナ州予備選では55%の票を得て圧勝した。
アメリカの有権者は、この候補者の経験や実績以外の部分を見ているようだ。オバマの強みは、かつてのケネディがそうだったように、世代というカードを巧みに活用する能力にある。
現在アメリカが直面する「待ったなしの状況」を強調し、忍耐を説く人々への不信を口にするオバマの言葉は、「たいまつは新しい世代に引き継がれた」というケネディの大統領就任演説の有名な一節とだぶって聞こえる。
「(オバマは)多くの点で60年当時のケネディに似ている」と、ケネディの顧問だったセオドア・ソレンセン(79)は言う。「ケネディはカトリック教徒だし、若輩者で党執行部の一員でもないと、選挙のプロは否定的だった。しかし彼らは、大統領候補を指名するのは党幹部ではなく、全米の有権者だということを忘れていた」