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風刺画で読み解く中国の現実 Superpower Satire (CHINA)
「いざ立ち上がれ」という国歌を閲覧禁止にする中国共産党
©2022 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<ロックダウンに不満な市民が流して気分を晴らしているのは、民衆を煽り、団結を呼びかける「国歌」。ウェイボーなど中国SNS上では閲覧できなくなっているという皮肉>
「立ち上がれ、飢えに苦しむ奴隷たち!/救世主は現れたことはなく、神や皇帝にも頼れない/真理のため戦おう/これが最後の戦いだ、明日までに団結せよ」(中国語版歌詞の翻訳)
19世紀後半にフランスで誕生した「インターナショナル(国際歌)」は、共産主義・社会主義を代表する革命歌としてとても有名だ。中国でも1921年の共産党結成以来、伝統的革命歌として、国慶節や党全国代表大会など重要な場面で歌われてきた。中国人なら誰でも知っている歌だ。
しかし上海でロックダウン(都市封鎖)が始まって以来、この革命歌をめぐる事情は一変した。自由を失い、食料も不足し、急激に生活が不便になった上海で、ある市民は政府を直接批判するのが怖いから、インターナショナルを自宅で流して不満を晴らした。すると、家を訪ねてきた警察に連行された。
中国の国歌として広く伝わる「義勇軍行進曲」の歌詞も、新浪微博などの中国SNS上で閲覧できなくなっている。「いざ立ち上がれ 奴隷を望まぬ人々よ!」と民衆をあおり立てる歌詞がロックダウン中の人々の憤まんを呼ぶ恐れがある、と当局が危険を感じたのかもしれない。
「義勇軍行進曲」がその歌詞を禁じられたのは、今回が初めてではない。1930年代に誕生したこの愛国歌は、民族解放の象徴的な歌として広く歌われた後、49年の建国宣言の時に代理国歌として天安門広場に響いた。
ところが60年代の文化大革命中、作詞者の田漢(ティエン・ハン)が批判されたことでその歌詞も禁じられ、一時は曲だけが演奏された。歌詞は「われわれは千秋万代にわたって毛沢東の旗を高く掲げて進め」と、毛沢東礼賛的な内容に変更され、文革終結直後の78年に正式な国歌となったが、82年に文革色が強く改革開放と合わないという理由で田漢の歌詞に戻された。
インターナショナルも国歌も「立ち上がれ」と労働者の団結を呼び掛ける。49年以前の国民党政府時代に民衆をあおるために利用したこの2つの革命歌を、政権を握った現在の共産党が危険視している。暴力革命で政権を奪い取った人々が次の暴力革命を恐れる──こんな皮肉はない。
ポイント
インターナショナル
1871年に仏社会党の要求によりフランスで作られた。1943年までソ連国歌。ウジェーヌ・ポティエ(欧仁・鲍狄埃)作詞。風刺画の楽譜上の数字は中国で広く使われる数字譜。
田漢
1898年湖南省生まれ。劇作家・詩人。1917年に日本に留学し、東京高等師範学校で学ぶ。20年帰国。32年共産党入党。66年からの文革で日本文化との関係性を批判され、68年に獄中で死去した。
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