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風刺画で読み解く中国の現実 Superpower Satire (CHINA)
中国は女性の身体と人権を「国有化」...「低出生率の罠」を脱出できるか
©2022 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<子供を産むか産まないか、産むなら何人産むか。中国では、これらを決めるのは親でなく共産党と国家。そこには政府の「焦り」がある>
「子供は1人でいい」。世界中の誰もが知る、この中国特有の人口抑制の国策「1人っ子政策」は2015年に「2人っ子政策」に、さらに最近突然「3人っ子政策」に変わった。
21年12月、中国の官製メディアは「3人っ子政策を実行するため、党員や幹部らは行動を見せるべき」という社説をネットに載せた。「あれこれと口実をつくって1人や2人だけで済ませるのはいけない。3人っ子政策の実行は、全ての党員と幹部にとって国の人口を増やすための責任と義務だ」という内容だ(なぜかすぐに削除されたが)。
1979年、中国政府は「一組の夫婦が子供を1人だけ産む」国策を実行し始めた。計画経済で生じた資本や資源、物資の不足を人口抑制で和らげることが目的だ。人口の急増は確かに抑えることができたが、急速な社会の高齢化や、人手不足による人件費高騰も招いた。中国国家統計局の21年度のデータによると、今の中国は60歳以上の人口が2億6402万人で、全人口の18.7%を占める。これがある学者の予測では、35年になると4億2000万人に達する。
「養児防老(子供を育てるのは老後に備えるため)」は、農耕社会に生きた中国人の根強い伝統的観念だ。そのため、かつて1人っ子政策を推し進めるとき、政府は「1人だけ産めばよい、老後の生活は政府が面倒を見る」と約束した。しかしそれは口先だけで、年金も医療保険も不十分。子育て費用も高騰する一方で、子供を望まない若い夫婦も増え続けている。20年の中国の出産適齢期女性の合計特殊出生率はたった1.3。中国は「低出生率の落とし穴」にとっくに落ちている。
中国政府が慌てて3人っ子政策を進めようとしているのは、それが理由だ。1人っ子政策時代に1人以上産んだ場合、高額の罰金や停職処分、昇進の見送りといった罰を受けなければならなかったように、政府が強制手段を使う可能性は十分ある。
子供を産むか産むまいか、そして子供の数は、親でなく党と国が決める──習近平国家主席が「全過程の民主」だと訴える社会主義国家・中国では、女性の子宮は母親ではなく、国と党に属している。
ポイント
低出生率の落とし穴
出生率1.5を長く下回った結果、子供が少ない状態が当たり前になり、脱出できない状況を言う。「低出生率の罠」とも。長期間1.5を下回り、脱出できた国はない。
全過程の民主
2019年の重要会議「4中全会」後に習近平が言った言葉。共産党の全ての政策は選挙の有無とは関係なく、中国的には完全に民主的なシステムを通じて決まるという意味。
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