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風刺画で読み解く中国の現実 Superpower Satire (CHINA)
「川普(トランプ)が負けたらウンコを食べる!」米大統領選で対立する中国人のむなしさ
China's Trump Lovers and Haters / (c)2020 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<選挙権がないのに家族同士でけんかをしたり、友人と絶交したりする始末。「川普(トランプ)」をめぐる中国人の論争は真剣そのもの>
あなたは「川粉(トランプファン)」? それとも「川黒(アンチトランプ)」? 米大統領選をめぐって深刻な二極分断が起きた。もっともアメリカ社会ではなく、中国SNS微信(ウェイシン)の記事共有機能、モーメンツ(朋友圈)での話だ。
アメリカの選挙権がないのに、「川普(トランプ)」をめぐる中国人の論争は真剣そのもの。家族同士でけんかをしたり、友人と絶交したりするほどだ。「もしトランプが負けたら俺はウンコを食べる!」という、とんでもない賭けをした「川粉」も現れた。
さらに面白いことがある。現在の「川粉」と「川黒」たちは、それぞれ4年前の立場から完全に逆になっているのだ。4年前、中国人「川粉」は愛国者ばかり。彼らはトランプがあくまでもビジネスマンで政治に無関心、経済最優先だろうと思い込み、その当選は中国に有利だと信じ応援した。だが、その結果起きたことは想像と正反対だった。次々に繰り出される貿易関税、ファーウェイ(華為技術)への禁輸強化、中国人留学生や研究者のビザ取り消し、新型コロナの中国非難......。4年後、かつての「川粉」たちは「川黒」に変わった。
その反対に4年前、トランプの当選で「アメリカの崩壊だ」と悲嘆した「川黒」たちは今、トランプの再選を支持する「川粉」に変身した。彼らはアメリカ的価値観に憧れる中国の自由派だが、なぜトランプ支持に変わったのか。
「私はトランプファンではないが、トランプの再選を支持する」。4年前、トランプを批判した天安門事件の学生リーダー王丹(ワン・タン)もその1人だ。トランプは確かにアメリカのリベラルな価値観を傷つけたが、世界的な民主主義と自由精神を破壊しているのは中国共産党。バイデンの対中政策はあまりにも手ぬるく、嘘ばかりの中国政府に対してはトランプのような強硬策が必要だ──トランプを支持する自由派中国人はそう考えている。
彼らの考えも理解できる。だが、外圧で中国共産党を崩壊させても、中国に民主と自由が当然のように到来するのか? その国の人々の覚醒がない限り、1つの独裁政権が倒れても、新たな独裁政権がやって来るだけではないか? 作家・魯迅が目指した「中国人の覚醒」はまだ遠い。
【ポイント】
你川黑!/ 打你个川粉!/ 严禁翻墙/ 川粉黑名单
このアンチトランプめ!/トランプファンのおまえをやっつけてやる!/壁越え厳禁/トランプファンのブラックリスト
王丹
1989年の民主化運動・天安門事件のリーダーの1人で、事件後に逮捕・投獄。国際的な圧力で1998年に仮釈放されアメリカへ亡命。現在は中国現代史を教えながら中国の民主化運動を続けている。
<本誌2020年12月1日号掲載>
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