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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
夫婦の子づくりを中国共産党が振り回す
<中国の悪名高い「一人っ子政策」は2015年末に「二人っ子政策」へと転換されたが、その後も若い世代は出産に対して消極的>
先日、米ブルームバーグが公表した「中国が年内に産児制限による計画出産政策の完全撤廃を検討」という記事が中国のネット上で爆発的な話題となっている。本当なのか! ネットユーザーたちはびっくりし、そして疑問を抱いている。
今の中国は13億人を超える人口大国だが、1949年に新中国が成立した当時は5億4000万人だった。毛沢東の「いずれ人口は武器になる」という考え方によって、冷戦時代に人口は国家戦略と位置付けられ、50~60年代には子供をたくさん産んだ女性が「英雄母親」として政府から表彰された。
「英雄母親」のおかげで、80年代初めに中国の人口は10億人を超えた。しかし平和な時代において、有限な社会・環境資源を消費する膨大な人口は政府にとって頭痛の種。そのため82年の年末、70年代末期から既に推進されていた「計画生育」といわれる政策が基本国策となり、一人っ子政策が本格的にスタートした。
「人が多いほど良い」方針から「一人っ子だけが良い」方針に転換し、1人だけ出産する女性を「模範母親」と呼ぶ。昔のようにたくさん出産する女性は「英雄母親」どころか、国策違反の「超生母親(生み過ぎの母親)」とよばれ、罰金あるいは堕胎を強制された。
40年間近く続いた一人っ子政策の成果は大きい。専門家は、もし計画生育政策がなかったら、今の中国の人口は16億人近くになっていただろうという。ただ、副作用もだんだん表れてきた。男女比率のバランスが崩れたほか、特に高齢化も深刻化している。
62~70年の中国の出生率は人口1000人当たり平均36.8だったが、2017年は12.43。これは15年の12.07とあまり変わらない。15年末に、一人っ子政策が二人っ子政策に転換されたが、「産みたくない」「負担が大きい」などの理由で若い世代の出産に対する態度はやや冷たいらしい。
だが、社会が高齢化するほど政府の負担は大きくなる。そして、今の「風雲突変」な国際情勢をみると、「人口は武器になる」という考えによって、いつの間にかたくさん出産する女性がまた「英雄母親」視され、政府から表彰を受ける時代が再び到来するかもしれない。人民はいつも権力者に翻弄されているのだ。
【ポイント】
还不快去造小孩!/多生优生报效祖国
急いで子供をつくれ!/優秀な子供をたくさん産んで、祖国に報いよう
出生率
人口1000人に対する1年間の出生数の比率。15年の日本の出生率は8.0
<本誌2018年6月12日号掲載>
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