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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
外国人のための中国共産党大会講座
©2017 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<中国共産党大会で最高指導部となったメンバー7人は、習近平を除けば単なるお飾り。習がこれから毛沢東のような独裁者になる可能性もある>
人形の中から人形が出てくるロシアの「俄羅斯套娃(マトリョーシカ人形)」のプーチン版をご存じだろうか。開けても出てくるのはプーチン大統領ばかり。つまり、ロシアに本当の権力者はプーチンしかいない、という皮肉だ。では中国でも、習近平(シー・チンピン)国家主席ばかりのマトリョーシカ人形が作られるのだろうか?
共産党大会が先日終わり、新しい最高指導部のメンバー7人が発表になったが、外国メディアの予測報道は軒並み外れ、独裁を続けたい習は後継者候補の若手を選ばなかった。普段でも共産党取材は難しいが、習体制になって情報統制が厳しくなり、より展開が読みづらくなっている。そこで私が今回、特別に「外国人のための党大会講座」を開講しよう。
まず、みんな忘れているようだが、今回の最大の勝利者は習の盟友である王岐山(ワン・チーシャン)のスキャンダルをアメリカで告発し続けた大富豪の郭文貴(クオ・ウエンコイ)だ。王が定年延長をゴリ押しして最高指導部に残れなかったのは、明らかに郭の告発が原因。いろいろ批判されたが、個人で国家に戦いを挑んで結果を出したのだから立派な男だ。
最高指導部の人選も、胡錦濤(フー・チンタオ)前主席派や江沢民(チアン・ツォーミン)元主席派が入ったから習は妥協を強いられたという分析がある。これも間違いだ。トップである政治局常務委員7人は習を除けば単なる飾り。その下の政治局員、中央委員は圧倒的に習の息の掛かった人物が多い。
大した実績もないのに党規約に「習近平の......(長いので省略)思想」を入れた。習は今、毛沢東が住んでいた北京・中南海の「菊香書屋」で暮らしていると聞く。鄧小平も住めなかった場所だ。洗脳教育の効果で国民の礼賛ムードも高まっている。共産党員の大学生が、外資系企業の就職面接で「会社に党支部をつくれ」と大真面目に語ったそうだ。
文革を発動し、死ぬまで独裁を維持した毛は82歳まで生きた。習は今年64歳。習だけのマトリョーシカ人形が作られるのはまだ早い。しかしもし10年の任期を超えて続投するなら......マトリョーシカ人形どころか、毛主席記念堂に代わって習主席記念堂が北京にできるだろう。
【ポイント】
菊香書屋
清朝・康熙帝時代の建築。毛沢東が中南海で初めて住んだ家。毛はベッドの上に歴史書を並べ、それを読みながら権謀術数を練った
毛主席記念堂
北京・天安門広場のそばにある毛沢東の遺体を収めた施設。なぜか見学者は足早に遺体の前を通過させられる。遺体ではなくろう人形との説も
<本誌2017年11月14日号掲載>
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