コラム

「ハリスの当選確率60%」は本当か?驚異的な勢いの正体は

2024年08月30日(金)12時45分

5)ハリスは目覚ましい成長力を発揮している。演説中の身ぶり手ぶりに始まり、個人的なストーリーの用い方に至るまで、数年前に比べると候補者として格段に成長した。

私の学生たちは、ハリスに成長の余地がほとんどないと見なして、大統領になる可能性をほぼゼロと判断していた。しかし、そうした評価は間違っていたようだ。


6)ハリスは自分の弱点を心得ていて、苦手なことを徹底して避けている。事実上の民主党大統領候補になって1カ月余りの間に、一度も記者会見を行っていない。準備なしで質問に回答するのが苦手なため、ボロを出しかねない局面を極端に制限しているのだ。

7)ハリスは、トランプに対抗する上で有効な主張ができている。バイデンはトランプを邪悪な脅威と位置付ける主張を展開したが、ハリスはトランプの「奇妙」さを強調し、嘲笑している。

トランプは半世紀近くアメリカのセレブであり続け、国民によく知られている存在だ。そのような人物の人格を否定することは容易でない。そこで、ハリスはトランプの人格ではなく、ブランドを攻撃している。人格に対する評価はそうそう変わらないが、ブランドへの評価は変わりやすい。

8)2008年の金融危機に端を発する大不況以降、アメリカ人の間には「変化」を求める思考が根強くある。ハリスはトランプに比べて未知の存在であり、年齢も若いので、現職の副大統領という立場にありながら、自身を変化の担い手と位置付けやすい。

9)バイデンは政策を訴える際、トランプの危険性を強調していた。それに対して、ハリスは有権者を中心に据えたメッセージを発し、大衆迎合的な経済政策を前面に押し出している。有権者を主役と位置付けているのだ。

10)アメリカの社会には、新しいリーダーやフレッシュなリーダーを欲する思いが鬱積している。その点に関して言えば、トランプは過去を体現する存在と言わざるを得ない。

選挙戦がバイデン対トランプという図式だったときは、バイデンがトランプの危険性を強調しても、有権者にあまり強い印象を与えられなかった。有権者は、現職大統領の健康問題を心配することにも辟易していたからだ。しかし、ハリスがトランプの対抗馬になったことで状況は一変した。

◇ ◇ ◇


プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を

ワールド

米関税措置、WTO協定との整合性に懸念=外務省幹部
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story