コラム

ハリス、副大統領から大統領候補へ...「マダム・プレジデント」の誕生なるか

2024年08月02日(金)10時50分

newsweekjp_20240801021855.jpg

民主党の新たな大統領候補に浮上したカマラ・ハリスはトランプにとって強敵だ MARCO BELLOーREUTERS

例えばノースダコタ州の有権者は、カリフォルニア州の有権者よりも大統領選で1人当たり3倍の力を持つ。そして共和党は概して人口密度の低い州で強い(民主党はその逆)。実際、2000年と16年の大統領選で共和党は一般投票(総得票数)で敗れたが、選挙人の獲得数で逆転勝利を収めている。今回も、ハリスが当選するためには一般投票で600万票の差をつける必要があるとの試算もある。

命運を左右しそうな激戦州はアリゾナ、ジョージア、ミシガン、ウィスコンシン、ネバダ、ペンシルベニアの各州。これらの州はどちらに転んでもおかしくないが、投票率が上がれば民主党に有利だ。アリゾナでは前回22年の中間選挙で民主党が上院選と州知事選を制したが、それは予想を上回る投票率のおかげだった。


副大統領候補選びがカギ

ただしハリスの実力には手厳しい評価もある。前回20年の大統領選では民主党予備選に名乗りを上げたが、あっという間に失速した。滑り出しこそ好調だったものの、陣営の混乱に足を引っ張られて予備選開始前に撤退した。

なにしろスタッフの交代が多かった。上院議員時代もそうだったし、副大統領になってからも最初の2年間は入れ替わりが激しかった。また地元のカリフォルニア州では盤石の地盤を誇るが、あそこは激戦州に比べて圧倒的に左派色が強い。だから勝敗のカギを握る中西部で選挙戦を優位に運べる保証はない。

しかし挽回のチャンスはある。大事なのは伴走者(副大統領候補)の人選だ。普通なら伴走者が注目を集めることはまずないが、今回はそうとは限らず、しかもハリスにとって有利となる可能性がある。

共和党がJ・D・バンスをトランプの伴走者に選んだのは、その若さ(この8月2日で40歳)ゆえだ。彼がオハイオ州選出の上院議員で、本選挙の決め手となりそうな中西部の工業地帯に強いという点も重視されたに違いない。

ただし全国レベルの人気は低い。44年前から実施されている副大統領候補の好感度調査を見ても、バンスは歴代22人の候補者中唯一、マイナス評価となっている(歴代候補の好感度は平均でプラス19%)。

そうであれば、民主党はハリスの伴走者に魅力的な、そして激戦州で人気の高い政治家を起用し、その存在を強くアピールすればいい。ちなみに賭け市場ではアリゾナ州選出上院議員で元宇宙飛行士のマーク・ケリーと、ペンシルベニア州知事のジョシュ・シャピロが本命視されている(本選挙で勝つにはどちらの州も落とせない)。続く候補はノースカロライナ州知事のロイ・クーパー。この州を民主党が制すれば、共和党はかなり苦しくなる。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、今年「適切な時期に」金利引き下げの公算

ビジネス

バイデン大統領、3日にも日鉄のUSスチール買収可否

ビジネス

中国、電池・重要鉱物関連技術のさらなる輸出規制を提

ワールド

尹氏拘束へ大統領公邸に進入、韓国捜査当局 治安部隊
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に突き落とした「超危険生物」との大接近にネット震撼
  • 2
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを拒否したのか?...「アンチ東大」の思想と歴史
  • 3
    「これが育児のリアル」疲労困憊の新米ママが見せた赤ちゃんハプニングが話題に
  • 4
    イースター島で見つかった1億6500万年前の「タイムカ…
  • 5
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 6
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 7
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡…
  • 8
    中高年は、運動しないと「思考力」「ストレス耐性」…
  • 9
    「少数与党」でモヤモヤする日本政治だが、そのしな…
  • 10
    JO1やINIが所属するLAPONEの崔社長「日本の音楽の強…
  • 1
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も助けず携帯で撮影した」事件がえぐり出すNYの恥部
  • 2
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    ヨルダン皇太子一家の「グリーティングカード流出」…
  • 5
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 6
    JO1やINIが所属するLAPONEの崔社長「日本の音楽の強…
  • 7
    イースター島で見つかった1億6500万年前の「タイムカ…
  • 8
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 9
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に…
  • 10
    流石にこれは「非常識」?...夜間フライト中に乗客が…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 8
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story