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サム・ポトリッキオ Surviving The Trump Era
メディアが注目するのは極端な左派右派ばかり......アメリカの「サイレントマジョリティー」はなぜ無視され続けるのか
最も重要な争点でバイデンに対する評価は低いが…… ELIZABETH FRANTZーREUTERS
<現在の米政治の隠れた真実の1つは、両党のリーダーや活動家は激しく二極化し、その間に大きな亀裂が生じているが、国民全体は違うということだ>
11月8日の米中間選挙が近づき、専門家はあれこれ予想を口にするが、本質的な問題は選挙結果を左右する決定的な争点は何かだ。
端的に言えば、重要なのは個々の政策よりも、「説得可能な有権者」を主役に据えた選挙戦を展開できるかどうか。一般市民の日常生活を選挙運動の最重点項目とすることに本気なのは、どの政党なのか。
世論調査をざっと見たところ、与党・民主党にとって不吉な兆候が表れているようだ。最も重要な5つの争点のうち3つで、バイデン大統領の対応は33%未満の支持しか得ていない。上位12項目の争点のうち支持率が50%あるのは、11番目に重要なパンデミック対策だけだ。
最も重要な争点は回答者の82%が「極めて重要」「とても重要」と答えたインフレだが、この問題でバイデンを支持する声は30%。2番目に重要な犯罪対策でも支持率は32%だ。3番目の選挙と投票は43%、4番目の失業対策も43%と少しはましだが、5番目の移民問題では31%にとどまる。
さらに9月に行われたギャラップ社の世論調査によれば、経済政策では野党・共和党が11ポイント差(48%対37%)でリードする。これらは一流の統計学者や世論調査機関が手がけた客観的な数字だが、「多数派の中間層」が何を望んでいるかを捉え切れていない。彼らは政治家に対し、日々の暮らしの問題解決に全力で取り組むことを求めている。
現時点で民主・共和両党のどちらも明らかな優位に立てていない理由の1つは、両党とも相手への非難に終始しているからだ。テレビやSNS上で、インフレを招いたとして共和党は民主党をたたき、民主党は共和党を中絶問題で過激すぎると主張し、民主主義を危険にさらしていると非難する。これでは「有権者のことはどうなったのか」と言いたくなる。
現在の米政治の隠れた真実の1つは、両党のリーダーや活動家は激しく二極化し、その間に大きな亀裂が生じているが、国民全体は違うという点だ。
ある政党が選挙で勝ったとしても、過激な支持層は国全体では少数派なので、イデオロギー色の強い政策を強引に推進すると、最終的に「ソフトな」支持者を遠ざけ、無党派層に嫌われて野党に政権を奪われる──政権交代が頻繁に起こる理由の1つは、このサイクルが何度も繰り返されているからだ。
メディアが取り上げるのは「一般的な国民」ではない
一方、メディアは協調よりも対立を強調したいビジネス上の動機があるので、ほとんどの報道は大半の国民よりも過激で分極化した「政治層」に焦点を当てる。実際、大半の国民は政治とは完全に距離を置いている。
私が博士論文執筆中に愛読した米デューク大学サンシャイン・ヒリガス教授の『説得可能な有権者』は10年以上前の本だが、現状を見事に言い当てている。どちらの党にも投票する可能性がある有権者は、両方の党の政策に支持する部分と嫌いな部分がある場合が多い。
選挙戦の本質は、そのような有権者が重視する1つか2つの争点を強調し、より多くの票を獲得しようとする戦いだ。この本は、実際に極めて多くの有権者が投票する政党を替える可能性があることを教えてくれた。
ブティジェッジ現運輸長官は2020年大統領選出馬の3年前、立候補の動機がよく分かる手紙を書いている。「私たちの地元にとっても大半のアメリカ人にとっても、政治はショーではない。その結果はワシントンの内側やツイッターやテレビの画面ではなく、私たちの家庭に影響を与える」
世論調査で何が最も重要な争点なのかを確認するのは大切なことだが、最終的に選挙結果を左右するのは、政治家が自分たちの問題解決に本気で取り組んでくれることを望む有権者の気持ちなのだ。
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