コラム

FBI捜索でトランプはますます次期大統領に近づいている

2022年08月23日(火)11時00分

マールアラーゴ捜索から2日後のトランプ(ニューヨーク) DAVID DEE DELGADOーREUTERS

<予備選最大のライバルを引き離し出馬表明も早まる見込み。「劣勢」民主党も敵失を追い風に出来ない>

トランプ前米大統領は就任早々、アメリカがイスラエルから受け取った過激派組織「イスラム国」(IS)に関する機密情報をロシア外相に漏らした。

2019年には、攻撃目標だったイランの施設の極秘写真をツイートした。

公式法令集・合衆国法典の第18編2071条には、政府文書を保管する者が「あらゆる公的機関に提出または寄託された(中略)あらゆる記録、議事録、地図、書籍、資料、文書その他のものを(中略)故意かつ不法に隠匿、移動、損壊、削除、破壊した」場合、罰金および最高3年の禁錮刑を科せられる可能性があると記載されている。

この法令は、大統領の関連文書が大統領本人ではなく国民全体の所有物であることを示している。国立公文書館はトランプ時代のホワイトハウスに、大統領が保有する「全文書の確実な引き渡し」を求めていた。

文書を回収できなかった同館は司法省に連絡し、司法省はFBIに連絡を取り次いだ。本人は「彼らのものではない、私のものだ」と側近に語ったが、トランプはおそらく法律を破った。証拠は十分にある。

ただし、トランプがたとえ有罪になっても、大統領選に出馬する資格はある。合衆国憲法には、立候補の資格が明確に定められている。35歳以上であること、アメリカ生まれであること、少なくとも14年間国内に居住していること、条件はそれだけだ。

フロリダ州にあるトランプの豪邸マールアラーゴへのFBIの捜索で、2024年大統領選の出馬表明は早まるはずだ。従来は2022年11月の中間選挙後とみられていたが、9月に前倒しされる可能性が高い。トランプは明らかに、フランスやブラジル、イタリアなど他の民主国家の首脳が起訴あるいは投獄され、その後に実質的な政治力の基盤を失ったことを認識している。

調査会社モーニングコンサルトと政治サイト・ポリティコの共同世論調査によれば、共和党員の58%が2024年大統領選の予備選でトランプを支持すると回答した。2020 年以降で最高の数字だ。さらに共和党員のほぼ7割が今回の捜索は政治的動機によるものと回答した。実際、トランプはFBIの捜索を受けて以降、予備選最大のライバルと目されるフロリダ州のデサンティス知事に10ポイントの差を付けた。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

伊藤忠、西松建設の筆頭株主に 株式買い増しで

ビジネス

英消費者信頼感、11月は3カ月ぶり高水準 消費意欲

ワールド

トランプ氏、米学校選択制を拡大へ 私学奨学金への税

ワールド

ブラジル前大統領らにクーデター計画容疑、連邦警察が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story