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ついに復活、大本命バイデンの「内なる敵」は若者たち?
3) 左翼版トランプ
左翼のサンダースと無定見なトランプには似たところが多い。まず、どちらにも自分の実績として誇れるものがない。トランプは不動産業者の父親から全てを引き継いだが、自分で立ち上げた事業はほとんど失敗に終わっている。
サンダースは政治家になるまで非常勤の仕事に就いたり失業したりの人生で、特筆に値する業績はない。電気代が払えず、近所から盗電したこともある。純粋なふりをしながら、典型的な偽善にまみれた人物でもある。
自らの誠実さと一貫性を訴えるが、使う手はトランプと一緒だ。かつて、自分の医療記録を公表できない人間は大統領候補として失格だと公言していたが、心臓発作を起こしてからは自分の医療記録の公開を拒んでいる。
全ては既得権を守るために「仕組まれて」いて、自分のような異端者を排除しようとしているとか、マスコミには自分に対する根深い偏見があるとかの言い方も、トランプそっくりだ。
そしてサンダースは怒り、辛辣な発言を繰り返し、怒鳴り、叫び、顔をしかめる。その激烈さは彼の信者(失礼、熱烈な支持者)に乗り移り、彼らは自分たち以外の民主党員をアメリカの敵であるかのように攻撃する。
サンダースは非常に利己的でもある。だから国益よりも自分のメンツを大事にする。もはや勝ち目はほとんどないのに、潔く身を引くどころか徹底抗戦を叫び続け、民主党内の亀裂を深めている。アメリカにとってトランプは史上最大の脅威だと言いながら、サンダースは結果としてトランプを助け、その勝算を高めるのに一役買っている。
4)選挙は勢いが全て
選挙は勢いが全てだ。スーパーチューズデーの前までは確かにサンダースに追い風が吹いていた。だが3つの出来事を境に流れが変わった。
まず、サウスカロライナ州選出の民主党の大物ジェームズ・クライバーン下院議員が直前になってバイデン支持を表明した。同州に多い黒人有権者から絶大な信頼を得ているクライバーンの支持表明でバイデン陣営は勢いづいた。
次に、サンダースはCBSの報道番組『60ミニッツ』のインタビューで不評を買った。キューバの故フィデル・カストロ議長を称賛しただけでなく、自分の壮大な公約の実現可能性について口を濁したからだ。これで、態度を決めかねていた民主党支持者の一部がサンダースを見限った可能性がある。
地元有力者のバイデン支持表明と、テレビでのサンダースの失態。これで形勢が逆転し、3月1日のサウスカロライナ州予備選でバイデンの得票率はサンダースを30ポイント近くも上回った。
そして3つ目は、スーパーチューズデーを前に同じ中道派で38歳のピート・ブティジェッジと女性候補のエイミー・クロブチャー上院議員が撤退を宣言し、バイデン支持に回ったこと。結果を受けてマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長も撤退。これで党主流の中道派は早い段階で候補を一本化でき、無益な中傷合戦を回避できた。
5躍進した38歳 今年の民主党予備選で最も輝いたのはブティジェッジだろう。38歳の若さで、しかも同性愛を公言している候補者が1州でも民主党予備選で勝利を収めたのは史上初。その男がこの時期に撤退を選んだのは、国を愛すればこそだ。
ブティジェッジにはまだ選挙を続ける資金があった。しかし中道派の結束を固めるために身を引いた。小さな地方都市の市長しか経験していないのに大統領の座を目指す若者は、ドン・キホーテにもなぞらえられた。それでも大健闘の連続だった。
初戦のアイオワ州党員集会で開票作業が混乱したのは痛かった。あれで勢いをそがれなければ、2戦目も勝てたかもしれない。
だが、めげることはない。ブティジェッジには明るい未来が待っている。運がよければ閣僚ポストをもらえるかもしれない。経験不足で舌をかみそうな名字を持つ38歳の男にしては上出来だ。深呼吸して、次を目指せ。
<2020年3月17日号「感染症vs人類」より>
2020年3月17日号(3月10日発売)は「感染症VS人類」特集。ペスト、スペイン風邪、エボラ出血熱......。「見えない敵」との戦いの歴史に学ぶ新型コロナウイルスへの対処法。世界は、日本は、いま何をすべきか。
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