コラム

ブティジェッジは米史上最もデータを駆使する「天才政治家」

2020年02月12日(水)16時45分

筆者は1年以上前から、次の大統領はブティジェッジだと公言していた JONATHAN ERNSTーREUTERS

<米大統領選の民主党予備選で、38歳のピート・ブティジェッジが大躍進。初戦のアイオワ州で勝利、次のニューハンプシャー州で僅差で2位に躍り出たブティジェッジは、なぜ勝つことができたのか。ブティジェッジの友人であるサム・ポトリッキオ教授が明かす、「ピート大躍進の秘訣」>

アイオワ州党員集会が行われた翌朝、滞在先の東ヨーロッパで目覚めると、大量の電子メールが届いていた。メールを送ってきた人たちは私を「政治の賢者」「予言者」などと呼び、中にはどの会社の株を買えばいいか教えてくれという人までいた。

11月の米大統領選に向けた民主党候補者指名レースの初戦である2月3日のアイオワ州党員集会では、ピート・ブティジェッジが首位になった(集計の混乱により再集計が行われる可能性があるが)。これは大方の予想を覆す結果だったが、私は1年以上前から、次の大統領はブティジェッジだと公言していたのだ。

といっても、ブティジェッジはまだ40歳にもなっておらず、インディアナ州サウスベンドという人口10万人余りの小さな都市の市長にすぎなかった。そんな人物が次期大統領の有力候補だと主張しても、最初は笑われただけだった。

当時は世論調査でもほとんど名前が挙がらず、支持率が1%に達していた州は一つもなかった。その時点で、どうして躍進を予測できたのか。株式投資になぞらえて言えば、私はインサイダー情報を持っていたのだ。

8年以上前、私はあるシンポジウムに出席したとき、サウスベンド市長に就任したばかりのピートと知り合った。紹介してくれたリチャード・ルーガー上院議員(当時)いわく、途轍もない才能の持ち主だとのことだった。

実際、パネルディスカッションで市政について語るのを見て、私は確信した。これほど才能豊かな政治家には今まで会ったことがない、と。それ以来、私は彼と連絡を取り合い、大学で担当しているリーダーシッププログラムに講師として招こうとしてきた。リーダーを目指す学生たちにとって絶好のお手本になると思ったからだ。

6年前には、私が司会を務めたパネルディスカッションに登壇したことがある。このとき、今回のアイオワ州党員集会で番狂わせを起こせた要因が既に見て取れた。コンサルティング大手のマッキンゼーで働いた経験を持つピートは、アメリカ政治史上で誰よりもデータの使い方に精通した政治家と言っても過言でない。

データを活用して問題を解決することが楽しくて仕方ないらしい。6年前のパネルディスカッションでも、データを駆使して救急車の到着時間を早めたり、下水道の効率性を高めたりする話をしているときは文字どおり目が輝いていた。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story