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不正入学事件が浮き彫りにした、平等の国アメリカの不平等な現実
クシュナー(手前)とトランプは本当に実力で一流大学に入学したのか? Kevin Lamarque-REUTERS
<成功するチャンスは誰にでもあるはずだったのに、資産家が資金力で子供を一流大学に送っていた>
アメリカン・ドリームを夢見ている人は、アメリカよりカナダや北欧に行ったほうがいい。
アメリカは本来、貧しい家庭に生まれても大金持ちになるチャンスがあることを誇りにしてきた国だ。「機会の平等」を重んじる理念は、アメリカ独立宣言にもうたわれている。成功するチャンスは誰にでもある......はずだった。
しかし、この理念が揺らいでいる。裕福な家庭の出身で学業成績が冴えない若者と、貧しい家庭の出身で成績トップクラスの若者は、大学卒業率に違いがない。それが今日のアメリカの現実なのだ。
いま騒ぎになっている不正入学スキャンダルは、こうした不平等が生まれる仕組みを白日の下にさらした。裕福な親が子供を一流大学に入学させるために、入試コンサルタントを通じて試験監督者や大学のスポーツチームのコーチに「裏金」を支払っていたことが発覚したのだ。
裏金と引き換えに、試験監督者がテストの正解を教えたり、スポーツチームのコーチがスポーツ特待生制度を悪用したりして不正入学を手助けしていた。中には、全くプレー経験のないスポーツの特待生として入学を認められた学生もいた。
私が勤務しているジョージタウン大学では、テニスの元コーチが総額270万ドル以上の裏金を受け取り、裕福な家庭の子供を少なくとも12人入学させていた。その多くは、入学後は一度も大学代表としてテニスの試合に出場していない。
この事件では、有名女優や有力法律事務所のトップ、金融界や実業界の大物などが起訴されている。これらの資産家の子供たちは、親の資金力で実現した不正の助けがなければ、一流大学に合格できなかっただろう。
もっとも、アメリカのエリート大学の入学者選考が能力以外の要素に左右されるのは、今に始まったことではない。親が卒業生なら有利になるし、親が多額の寄付をすれば合格の可能性は大幅に高まる。
不当に席を奪われた怒り
トランプ大統領の義理の息子ジャレッド・クシュナーがハーバード大学に入学できたのは、出願直前に父親が250万ドル寄付したからだと言われている。高校時代の成績はぱっとせず、ハーバードなど論外だと、高校の教員たちは誰もが思っていた。
トランプ自身も、成績は精彩を欠いていたのにペンシルベニア大学に入学できた。当時のSAT(大学進学適性試験)の成績が公開されれば裁判に訴えると強硬に主張しているのは、おそらく点数が低かったからだろう。SATの点数が公開されれば、一流大学に合格できたのは父親の経済力のおかげだったと分かってしまう。
今回発覚した不正入学スキャンダルが激しい怒りを買ったのは当然だ。大学を目指す若者が増えるのに伴い、入試の競争は激化している。その中で志望校に入学できなかった若者たちは、本来なら入学する資格のない人たちに席を奪われていたことに気付き始めたのだ。
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