コラム

歴史的な米朝首脳会談が迷走した本当の理由

2018年06月09日(土)13時30分

「条件を決める方向に向かっている」というのはあながち間違いではない。NSCのマット・ポティンガー・アジア上級部長が非公式に、十分な準備期間が取れないので6月12日にシンガポールで開催するのは「不可能」との見方を示したとの報道に、トランプは「偽の情報源じゃなく、実在する人間を使え!」と猛反発。自分の能力評価への過敏さをご丁寧にも露呈した。

大統領就任から1年半、自分が偉大で史上最高の大統領だとアピールし続けていたら、リスクは高まりプレッシャーは増す。トランプは自分が準備不足だという現実に気付いて息苦しくなったのだろう。

トランプは狡猾なのか、それともたまたま運がいいのか。

会談中止を告げた金宛ての書簡(厳しさと魅力と追従が混在する)は政権内のプロの権限強化につながっている。今ではポンペオが主導権を握り、ソン・キム駐フィリピン米大使が実務協議の米代表団を率いる。ジェームズ・マティス国防長官、フィリップ・デービッドソン・インド太平洋軍司令官、ハリー・ハリス次期駐韓大使らの役割も拡大する。今のところ、トランプの不安は世界をはるかに安全にしているのかもしれない。

<本誌2018年6月12日号掲載>


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プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

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