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今回は違う──銃社会アメリカが変わり始めた理由
世界的に見ても、アメリカの銃犯罪の多さは異常だ。アメリカの銃犯罪による年間死者数は、他の先進国の30倍にもなる。銃所有率も極めて高い。ジュネーブにある国際・開発研究大学院で銃器に関する研究を行っているスモール・アーム・サーベイなどによれば、アメリカには人口100人当たり112.6丁の銃があるのに対して、日本はわずか0.6丁だ。アメリカの次に多いセルビアでさえ75.6丁、スウェーデンは31.6丁、だ。
「変化を起こす気があるのか」
適切な銃規制が行われれば、銃犯罪が大幅に減る可能性は高い。コネティカット州では、95年に拳銃の購入に免許取得を義務付けたところ、05年までの10年間で拳銃絡みの殺人事件が40%減ったとされる。銃が手に入りにくくなれば、銃を使った自殺も減るだろう(アメリカでは銃絡みの死亡事件の3分の2が自殺だ)。
アメリカの一般市民の大多数は、銃規制に賛成している。銃を所有する家庭でさえ、93%が銃購入者の経歴調査の厳格化を、89%が精神疾患者の銃所有禁止を支持している。
それなのになぜ、アメリカの銃規制は恐ろしく緩いのか。それは政治家(圧倒的に共和党議員が多い)が、NRAから献金をたっぷりもらっているからだ。ドナルド・トランプ大統領も、3000万ドルの献金を得ている。だから学校で乱射事件が起きても、政治家は犠牲者のために祈りをささげるだけで、何の行動も起こさないというお決まりのパターンが繰り返されてきた。
だが今回は違うかもしれない。
ダグラス高校の生徒を中心に、若者たち(その多くは参政権さえない子供だ)が率先して声を上げて、21世紀型の草の根民主主義を展開している。CNNの対話集会で、ダグラス高校3年生のキャメロン・カスキー(17)が、ルビオに挑んだ直球勝負がいい例だ。
「上院議員、あなたを見ると、AR15(半自動ライフル銃)を思い浮かべずにいられません」。カスキーはそう皮肉ると、ルビオに厳しく詰め寄った。「問題は、変化を起こす気があるのか、ないのかです。ルビオ上院議員、今ここで、今後はNRAから一切献金を受け取らないと約束してもらえますか」
会場が総立ちとなって嵐のような喝采を送ったのは言うまでもない。結局その日は、政治家として多くの場数を踏んできたルビオが、決定的な言質を与えずに乗り切ることに成功した。
だが、若者たちの勢いは失われていない。3月24日、彼らはワシントンで銃規制と学校の安全を訴える「マーチ・フォー・アワー・ライブズ(私たちの命のための大行進)」を計画している。これに感銘を受けた俳優のジョージ・クルーニーら多くの著名人が巨額の支援を申し出るなど、子供たちの熱意が大人を動かし始めている。
ジョークで政治や社会を痛烈に批判するコメディアンのスティーブン・コルベアは、「選挙法を改正するべきなのかもしれない」と、ある晩の番組で語った。「(大人がちゃんとした)銃規制を成し遂げるまで、選挙権は18歳以下限定にするんだ」
【参考記事】【歴史】NRAが銃規制反対の強力ロビー団体に変貌するまで
<ニューズウィーク日本版3月6日発売号(2018年3月13日号)は「アメリカが銃を捨てる日」特集。銃犯罪で何人犠牲者が出ても変わらなかったアメリカが、フロリダの高校銃乱射事件をきっかけに「銃依存症」と決別? なぜ変化が訪れているのか。銃社会の心臓部テキサスのルポも掲載。この記事は特集より>
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