コラム

超党派で広がる反トランプ連合、「全面戦争」が勃発寸前?

2017年11月04日(土)11時30分

ホワイトハウスが燃え上がる日も近い? P_WEI/ISTOCKPHOTO.

<ブッシュ元大統領が慣例を破って現職大統領を批判。オバマも合流して始まる全面戦争の行方は>

就任以降、国内外から批判と反感を買い続けているトランプ米大統領。あまりの異次元ぶりに議会や世論の間にはどこか諦めムードが漂っている印象もあるが、トランプ降ろしの動きは確実に進んでいる。

共和党のジェフ・フレーク上院議員は10月24日の演説で、トランプの振る舞いは「もうたくさんだ」と発言。「共犯者にならない」ために、来年の上院選には立候補しないと表明した。

自身が所属する党の大統領をここまで批判するのは異例だが、共和党の重鎮ボブ・コーカー上院外交委員会委員長も10月初め、ホワイトハウスが「大人の保育園」になっていると非難するなど、党内では反トランプのマグマが上昇し始めている。大統領就任からそれほど時間がたっていないこの時期に、これほどの批判が続出するのは前代未聞だ。

それでも、共和党員による「造反」の動きを懐疑的にみるトランプ支持者のような人なら、政界を引退する身だから批判ができるのだと指摘するだろう。トランプなら例えば、「彼らが度胸を見せるのは、有権者と向き合う機会がなくなったときだけ。残念!」と、ツイートして受け流すだろうか。

だが、現役世代の議員にも影響を及ぼしそうな、「反トランプ連合」の結成に向けて腰を上げ始めた人々がいる。

その1人はジョージ・W・ブッシュ元大統領。彼は歴代大統領には見られなかった動きで反トランプ運動を次の段階に進めた。大統領経験者が、自身の所属政党の現職大統領を批判することはまずない。ブッシュは民主党のオバマ前大統領さえ、一度も批判しなかった。

だがブッシュは自身の研究所が10月中旬に主催した討論会で、トランプを名指しこそしなかったが、「国民生活にいじめと偏見を蔓延させ、残酷さと偏狭さを生み、子供たちの道徳教育を損ねている」と非難した。トランプに異議を唱えただけではなく、トランプ主義は打倒すべきと明言したのだ。

オバマもすかさずブッシュを援護射撃した。「恐怖をあおる政治」を非難したブッシュの発言を拡大し、「トランプ大統領が体現しているものに背を向けるアメリカの政治と社会を自分たちが取り戻していこう」と、自身のイベントで聴衆に呼び掛けた。おそらく、オバマのメッセージは穏健派の共和党議員たちに向けたものだろう。民主党議員は、ハナから反トランプだ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

玉木国民民主代表、エネルギー政策で石破首相に申し入

ビジネス

保有国債の評価損が過去最大、9月末13兆6604億

ビジネス

独VW、中国新疆工場売却で合意 上海汽車との提携延

ワールド

ガザ各地に空爆、15人死亡 元ハマス報道官の息子も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...…
  • 5
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 6
    こんなアナーキーな都市は中国にしかないと断言でき…
  • 7
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 8
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 9
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story