G20議長国・中国に問われる世界市場混乱の説明責任
上海G20で、市場混乱の元凶・中国はどこまで手の内を明らかにするのか AlexLMX-iStock.
2月26日、27日に中国・上海でG20財務相・中央銀行総裁会議が開催されます。世界経済が混乱するなか、各国が金融・財政政策を動員して、如何にして経済の安定化を図るかが焦点です。
昨年夏以降のグローバルマーケットの混乱の震源地は中国でした。景気減速に歯止めが掛からないなか、政策対応の拙さや説明不足、不透明性に起因する株式・為替市場の動揺が続き、過度な中国経済悲観論が台頭しました。2016年2月20日には、証券行政トップである中国証券監督管理委員会(CSRC)主席が更迭されたことも明らかになりました。
こうした背景を受け、2月26日には周小川・人民銀行総裁が記者会見をする予定です。総裁に就任して14年目に入り「ミスター人民元」とも称される周氏が、人民元にまつわる疑問や不安を払拭できるのか、世界が注目しています。
人民元に何が起きているのでしょうか?
市場との対話は「不足」ではなくほぼ「なし」
第一に、人民元の国際化、金融・資本市場の対外開放の進展により、かつては盤石であった中国人民銀行による人民元レートの制御能力が弱まりつつあります。人民元国際化について、中国が人民元建て貿易決済を認めたのは2009年7月からと日は浅いのですが、その後のスピード感には目を見張るものがあります。今や中国は世界最大の貿易大国であり、2015年には中国のモノの貿易に占める人民元決済の割合は1/4、金額にすると116兆円に達しました。
中国人民銀行は2015年末時点で29カ国・地域の中央銀行・通貨当局との間で2兆9,822億元(約54兆円)の通貨スワップ協定を締結しています。一般的な通貨スワップ協定は、通貨危機や外貨不足の際に、一定のレートで相手国通貨などを融通し合う通貨安定のための協定です。いわば、短期流動性危機への対応が目的ですが、中国が締結した通貨スワップ協定はそれだけでなく、貿易・直接投資の人民元決済や人民元の外貨準備への採用など、人民元の国際化を強く意識している点に最大の特徴があります。
同時にオフショア人民元の運用手段の拡充も進められ、香港、英国等での人民元建て債券の発行の他、域外で保有される人民元を中国に持ち込んで金融・資本市場に投資するRQFII制度などが推進されています。
人民元は急速に世界に拡散しているのです。当然、各地に創設されたオフショア市場では、中国人民銀行のコントロールは及びにくくなります。
第二に、中国人民銀行はマーケットとの対話が不足している、との批判がありますが、足りないのではなく、これまで「対話をしたことがなかった」というのが実情でしょう。政策対応の拙さ、説明不足、あるいは不透明性が、マーケット参加者に不安や不信を与え、ひいてはグローバルマーケットでの中国に対する疑心暗鬼を増長させるのです。
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