コラム

「EXCELLENT WET PAPER」日本の商品パッケージで見かける奇妙な英語

2020年10月14日(水)11時25分

日本語の省略感覚は間違った和製英語の原因になる

●COCONUT CHOCO SAND

日本のスーパーの棚に並んでいたこの商品の写真を見たとき、「砂なんて食べたくない!」が私の最初の反応でした。SANDは「砂」であり、正しくはsandwichです。

このSANDはsandwich cookieの省略で、CHOCOはchocolateの省略を意図したのでしょう。「チョコ」と「サンド」はカタカナとして定着しているので、日本人の間では通じるかもしれませんが、英語ではそのように省略しないため、変に聞こえます。

特に今回の場合、クッキーの外側にあるココナッツフレークが砂のように見えるので、「本当に砂を食べるのか」と感じてしまうかもしれません。

日本人はchocolateやsandwichのような発音しにくい英単語を省略することを好みます。しかし、日本特有の省略方法を用いることが多い。基本的に、その省略方法はカタカナに基づいています。日本人同士ではそれで通じるかもしれませんが、その考えに基づいて省略された単語をローマ字にすると、英語として通じないことがよくあるので、注意が必要です。

望ましくない連想を避けるためにネイティブチェックをしよう

●High quality refined Japanese camellia oil make your hair moisture

この商品は私も使っていて、とても質の高い商品だと思いますが、パッケージに書かれている英語は残念ながら間違っています。

現在は日本のみの発売かもしれませんが、先ほども述べたように、日本で商品を買う人が必ずしも日本人というわけではありません。さらに、この英文では輸出した際に外国の人に悪い印象を与えてしまうかもしれません。

この英語の問題点は、単純な文法ミスです。まず、makeはmakesであるべきです。この文章では主語から考えて活用が必要であるため、三人称単数でmakesになります。

また、文中ではmoistureを形容詞として扱っていますが、本来は名詞です。形容詞にすると、moistになります。

しかし、髪の毛に関してはmoistをあまり使いません。moistはケーキなどの食べ物や、汗をかいた肌の修飾語として使われます。また、moistが気持ち悪いと思っている人が多くいるので、この単語の使用を考えるときには注意が必要です。

より適切な形容詞として、glossyやsilkyがあります。また、ここで動詞を使用するのも可能です。例えば、shineにすればとても自然なのではないかと思います。moisturizeをmakeの代わりに動詞として使う手もあります。そうすればmoisturizes your hairになります。

ネイティブの目には文法の間違いが目立つため、商品のイメージに悪影響を与えます。以上の理由からネイティブチェックは役に立つのです。

◇ ◇ ◇

今回紹介した物は全て日本の会社の製品で、もしかすると日本だけで発売されているのかもしれません。

しかし、日本には日本人だけが住んでいるという時代は既に終わりました。また、英語が流暢な日本人も多くなりました。そのため日本国内で販売されている商品にもネイティブチェックを通して、とんでもない英語が出回らないように気を付けて頂きたいです。

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 北九州市立大学英米学科グローバルビジネスプログラム教授。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『英語の品格』(共著)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著)など著書多数。最新刊は『マンガでわかる外国人との働き方』(共著)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:日銀「地ならし」で国債市場不安定化、入札

ワールド

EXCLUSIVE-中国のレアアース輸出、新規ライ

ビジネス

野村HD、成長フェーズ入りに手応え 2030年目標

ビジネス

英中銀、銀行の自己資本比率要件を1%引き下げ 経済
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 3
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 4
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story