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「HELLO, OUR STADIUM」新国立競技場の妙な英語──これで東京五輪を迎えるの?
アメリカ人だという@am_kazさんから興味深い指摘がありました。21世紀あるいは20世紀のシンプルな機器を使う際に、見下すようなメッセージ(説明)を下手な英語で伝えることはまさに日本っぽい、という意見でした。
確かに、日本独特の何でもかんでも説明したり注意したりする傾向は、外国人である私にとって非常に目に付きます。
例えば、エスカレーターに乗っているときに聞こえるアナウンスは、正直いつも怪訝に思っています。「黄色い線の内側に立ってください」とアナウンスが流れますが、ステップのアウトラインが黄色い線で縁取られており、その外側に立つことは不可能ではないでしょうか。
子供を持つ親なら、「お連れのお子様と手をつないでください」と言われなくても最初から子供と手をつないでいるでしょう。静かにエスカレーターに乗りたいと思いますし、そこまで言わないと利用者は分からないと考えているのかと、私はいつも疑問です。
説明不要なほど使い方が簡単な水飲み場にこのようなくどい説明を書くことは、確かに似たようなもので、外国人から見れば余計なお世話と思われる可能性があります。どこにどんな訳を付けるかを決めるときに、この点もぜひ考慮していただきたいものです。
報道によれば 、新国立競技場を作るには1569億円もの費用が掛かったようですが、施設内の英語表示を作ることには十分な予算を付けなかったのではないかと思われます。
かつて日本に住んでいたイギリス人コンサルタントの@pernilleruさんが、ファイナンシャル・タイムズ記者のツイートを見て「プロにお金を使う『無駄』を省き、翻訳を社内で済ませるという習慣が続いているようですが、それが日本のブランディングなのかもしれませんね」と皮肉っぽくツイートしていました。
確かに「社内翻訳」をしている日本企業は非常に多いのですが、ぜひ再考していただきたいやり方です。
オリンピックの際に日本の誇りとなるはずの新国立競技場にまで、妙な英語が溢れているのは非常に残念です。ちょっとしたことで印象は全然異なります。世界に見せる日本が少しでも良く見せられるように、細部にまで気を配ってほしい。
オリンピック関連の他の施設の英語表記はどうなっているかと、それも心配になりましたが、修正するための時間はまだあります。担当者の方々には、ぜひがんばっていただきたく思います。
2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。
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