コラム

「We are so sorry for the inconvenience」日本のホテルで見つけた妙な英語

2019年08月02日(金)18時15分

幼稚園児が言いそうな言葉で、洗練されていない印象

●お持ち帰りはご遠慮下さい It is not yours,Thank you

大浴場のある別のホテル(東京)の部屋の中に、この謎の英語が書かれているバッグがありました。まず、そもそもの問題として、外国人の多くはこのバッグが何なのかが分からないだろうと思います。日本では多くのホテルにこのようなバッグが置いてあり、大浴場までタオルやシャンプーを持って行くためのものです。

このホテルは外国人宿泊者が多かったので、このバッグが何のためのものなのかを説明するカードを付けたら親切ではないでしょうか。例えば「Please use this bag to take your things to the bathing area.(大浴場まで持ち物を運ぶためにこのバッグを使って下さい)」。

そのようなカードを用意し、This bag is hotel property, please don't take it home with you.(このバッグはホテルの持ち物なので、持って帰らないでください)、あるいはIf you like this bag, you can buy one in the hotel gift shop.(このバッグを気に入っていただいたのであれば、ホテルの売店でご購入することができます)と書いておくことによって、「これはタダでもらえない」ということを婉曲的に伝えられます。

しかし、このホテルはそうした方法を採らず、なんとバッグ自体にこの注意書きを書いてしまっていました。

なお、この英語表現はとてもストレートで、幼稚園児が自分のおもちゃを取られた時に言いそうな言葉であり、まったく洗練されていない印象を与えます。コンマの後のスペースはなく、またその後に大文字が来ているので、句読法も適切ではありません。

言いたいことが伝わるかどうかにおいても疑問で、宿泊者に対してちょっと失礼ではないかと思います。とはいえ、こんな変なことが書かれているバッグを、逆に面白いものとして土産物でもらいたい人までもいるかもしれませんが。

どうしてもバッグ自体に何かを書きたいのであれば、単にHotel Property(ホテルの持ち物)と記載したほうがいいでしょう。

無料で利用できるスマホに外国人は当惑してしまう

●お出かけの際、ご自由にお持ち下さい Please bring this phone out of the room.

最近、多くの日本のホテルに、無料で利用できるスマホが置いてあります。それは確かに宿泊者にとって親切ですが、私は外国ではこのようなものを見たことがないので、おそらく多くの外国人は驚いたり当惑したりするでしょう。

その説明資料の左上にはComplementary(補足)とあり、This is a smartphone which you can use for free during your stay.と書かれてあります。これは分かりやすく、とても良いと思います。

しかし、大きな字で書かれているPlease bring this phone out of the room.の一文は混乱を招きます。直訳すると「この電話を部屋の外まで持って行ってください」という意味で、なぜ持って行く必要があるのか、部屋に置いたままでは駄目なのか、などの疑問が湧いてしまいます。

For use during your stay - inside the hotel or out.(ホテルの中でも外でも、宿泊期間中のご利用のため)のような表現に変えれば、より分かりやすいのではないかと思います。ホテルの外だけではなく、ホテルの中でも利用できるということを伝えたほうがいいでしょう。

下にあるPlease take it out when you go outも同様に修正したほうがいい箇所です。なお、その続きのaccess to free internetもぎくしゃくしている英語なので、直すべきでしょう。

Unlimited internet, local and & international calls. Feel free to bring it with you around town. (インターネット、国内・国際電話が使い放題。お出かけの際にどうぞお気軽にお持ちください)。when you go out はホテルをチェックアウトする時だと混乱されるかもしれないので、それよりもaround town(街を回っている間)のほうが誤解を招く危険性が低くなると思います。

さらに混乱を避けるには、どこかに Please leave it in your room when you check out.(チェックアウトの際、部屋に置いたままにしてください)のようなことを付け加えるといいかもしれません。

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 北九州市立大学英米学科グローバルビジネスプログラム教授。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『英語の品格』(共著)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著)など著書多数。最新刊は『マンガでわかる外国人との働き方』(共著)。

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