コラム

「We are so sorry for the inconvenience」日本のホテルで見つけた妙な英語

2019年08月02日(金)18時15分

まず元の日本語自体が論理的かどうかを考えて

●この高さまでお湯を入れて下さい Please put the hot water up to this height

私が東京のホテルの部屋のお風呂で見かけた英語です。この英語は日本語の直訳として文法的には正しい表現です。しかし、よく考えると、言いたかったことは「この高さ以上にお湯を入れないでください」だと思われます。この表記だと、カップラーメンのようにここまでお湯を入れなければならないという感じになってしまいます。

Do not fill above this line.(この線以上に〔お湯を〕入れないでください)としたほうが望ましいでしょう。

翻訳をする時に、まず元の日本語自体が論理的かどうかをよく考える必要がある、ということの良い例だと思います。

「お手数をおかけします」は英語にしなくていい

●お手数をおかけしますが、上記の通りお願い致します。 We are so sorry for the inconvenience. Thank you very much for your cooperation.

これは九州で泊まったホテルの部屋の中にあったもの。夜の間、フロントデスクの内線番号が変わるというお知らせです(小さなホテルでしたので、夜はワンマン体制だったようです)。

日本語では、「お手数をおかけします」といった表現を使うことは礼儀の1つです。しかし、英語に直すと、それが過剰になる可能性があります。この英語を見る人は、違った内線番号を使うことがどんなinconvenience(手数)なのか、想像できないかもしれません。また、so sorryはとても強い言い方で、そんなに謝る必要があることなのかとも思われてしまいます。

そのため、ここで推薦したいのは、We are so sorry for the inconvenience.を完全にカットすることです。Thank you very much for your cooperation.だけでも丁寧さを示すには十分なはずです。

細かいところでは、TO THE GUESTより、TO OUR GUESTSのほうがいいでしょう。

最後に、何時から何時までどの内線を利用できるかを表している英語にはタイプミスがあるようです。ここでは内線11番は「朝10時から朝11時」だけの利用になってしまっています。校正を忘れないようにしましょう!

◇ ◇ ◇

観光ブームの最前線に立つホテルで働く皆様、日頃より外国人旅行客への対応、本当にありがとうございます。この記事での指摘が少しでも皆様のお役に立てれば嬉しいです。

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 北九州市立大学英米学科グローバルビジネスプログラム教授。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『英語の品格』(共著)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著)など著書多数。最新刊は『マンガでわかる外国人との働き方』(共著)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:トランプ税制法、当面の債務危機回避でも将来的

ビジネス

アングル:ECBフォーラム、中銀の政策遂行阻む問題

ビジネス

バークレイズ、ブレント原油価格予測を上方修正 今年

ビジネス

BRICS、保証基金設立発表へ 加盟国への投資促進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story