コラム

海外出張したら可能な限り現地観光をするべき

2023年08月02日(水)14時15分

とにかく国際ビジネスの成否は、相手の国の文化と社会を知ることにあり、著名な観光地を訪れることは、その第一歩になります。70~80年代の日本企業は、エコノミックアニマルと馬鹿にされながらも、こうしたリサーチを怠らず、ほとんど全世界を相手に商売をしていました。ですが、どういうわけか90年代以降は急にダメになっていきました。資金が枯渇したということもあるでしょうが、とにかく世界各地で異なる市場特性を調べるのが面倒になって、多くの企業が消費者向けのビジネスを放棄して、B2Bのビジネスに逃亡したのです。経済衰退の一因がそこにあります。

現在、ポストコロナの状況下で、観光ニーズはインバウンド(日本への来日外国人)もアウトバウンド(日本人の海外への観光旅行)も回復しつつあります。ですが、日本企業による海外出張はまだまだコロナ前の6割以下だそうです。円安という問題もあり、今後も完全には戻らないかもしれません。ということは、海外出張は本当に必要なケースに限定され、その頻度は抑えられたままということになります。

そうであればこそ、貴重な海外出張の機会には公式日程だけでなく、堂々と観光して、現地人と交流し、市場特性を徹底的に肌感覚で叩き込んでビジネスに活かして頂きたいと思います。これ以上の「負け」は、日本経済にとって許容できないからです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行融資、3月も伸び加速 米関税措置前で利

ビジネス

中国がグローバルサウスで主導的役割、新開発銀と協力

ワールド

カナダ総選挙、「反トランプ」で与党勝利 カーニー首

ワールド

5月停戦案と直接協議、ウクライナの返答待っていると
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story