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日本の「玉突き留学」政策の何が問題か?
日本人学生の留学支援に一定の意義は感じられるが…… FG Trade/iStock.
<外国人留学生招致の一部を国内学生の奨学金給付に回すほうが、日本経済へのコスパは高いのでは>
岸田首相が議長を務める政府の「教育未来創造会議」は4月27日に、2033年までに「海外留学する日本人を50万人に」「日本への外国人留学生を40万人に」するとの新たな目標を掲げた提言をまとめたそうです。
50万人の日本人を外国に留学させる代わりに、外国人留学生を40万人引っ張ってくるというのは、まるで玉突きかトコロテンのような話です。そんな面倒なことをするぐらいなら、日本人を国内でしっかり教育したら良いようにも思いますが、実際はどうなのか考えてみたいと思います。
まず、日本から海外に「出す」方ですが、個人的に『アイビーリーグの入り方』という本を書いていることもあり、日本の優秀な高校生が学部の段階から海外に留学することは、個々の例としては応援したい気持ちは強くあります。
最先端の技術を学びながら「世界を変える」熱意で技術革新に貢献する、金融工学に地球レベルの倫理性を付加した金融政策を学ぶ、それ以前に事実上は世界共通語となった英語で知的論戦や交友の拡大を図る......現在の日本国内の教育体制はこういったニーズに対する準備は十分ではないからです。
ですが、個々の若者の行動として理解できても、それが国策となると話は別です。例えば明治維新期の場合は、まず第1段階としては、若者を留学させる一方で「お抱え外国人教師」を招聘して教育機関を立ち上げました。ですから、すぐに第2段階への移行ができたのです。つまり、留学から帰国した若者、外国人教師の薫陶を受けた若者が指導的な地位に就くようになると、今度は国内の高等教育が社会の発展に寄与していったのです。
大学の定員割れは少子化のせい?
そのスピード感と比較しますと、今回の政策は「国内の大学改革は無理だし、国内の受験制度も、英語教育についても、高い基礎力と創造性の訓練体制についても、効果的な改革はすぐには無理」という諦めが前提になっている分、国策としては後ろ向き感が漂います。
そうではあるのですが、困難な改革へエネルギーを突っ込んで多くの人が不幸になるよりは、サッサとトップ層をG7各国に留学させて、その半分でも戻って日本社会の改良に従事してくれれば御の字という発想は、全く理解できないものでもありません。恐らく、霞が関や永田町の人々にも個々人としては、自分たちの子どもにそんな進路を考えるカルチャーが広がっているのかもしれません。
それでは、外国から招く方の留学生40万人についてはどうでしょうか。少子化が進むことを知りながら、大学や学部を増設して定員を広げた過去の政策を批判するのは簡単ですが、今からどんどん大学を閉鎖して教員を解雇するというのは不可能です。だとすれば、海外から学生を入れるのが得策という話はまずあります。例えば、日本人学生には不人気な人文系の学科や大学院では留学生の方が多いという話は20年ぐらい前からあります。
さらに、そうした外国人留学生の一部が日本に定住して、優秀な労働力になってくれればという期待感も理解はできます。ですが、よく考えるとこの構想には一つ根本的な疑問が湧くのです。それは、大学の定員割れが少子化のせいなのかという問題です。
もちろん、少子化により18歳人口は減少の一途をたどっています。第2次ベビーブーム(氷河期世代)には200万人だった年齢あたりの人口ですが、2023年の18歳は112万人です。ということは、仮に全員を偏差値の対象とすると、1991年に偏差値50の人は上位100万人目の位置だったのが、現在の偏差値50は56万人目になるわけで、それだけ高等教育への準備のできた層は縮小しているわけです。ですから、少子化で大学全入になってバンザイということにはならず、足りない層は留学生で埋めなくてはならないというストーリーは成り立ちます。
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