コラム

投票日迫る中間選挙、上院の勝敗を握るペンシルベニア州の情勢

2022年10月26日(水)17時15分

オズ候補ですが、医事評論家というより、近年はテレビでは有名なパーソナリティで自分の番組が全国ネットされるタレント候補と言えます。最初は、著名なテレビ司会者、オプラ・ウィンフリーの番組のレギュラーとして人気が出たこともあり、基本的にはリベラル寄りの人物でした。

その後は政治的には共和党の穏健派に近かったようですが、今回のコロナ禍における感染対策への反対、特に学校における子供の教育機会を奪うなという主張からトランプに接近したようです。また、両親がトルコ出身でイスラム系移民ということでも異色です。トランプとしては、とにかくオズ候補のタレントとしての知名度に惚れ込んだようでかなり力を入れており、財務官僚から金融界に転じたマコーミックという候補と、0.1%の僅差となるような熾烈な予備選を勝ち抜いて共和党の統一候補となったのでした。

一方のフェッターマン候補(民主)は、ハーバードで公共政策修士を取った後、ペンシルベニア州の西部の大都市、ピッツバーグ都市県内のブラドック町の町長を12年務めて州の副知事に転じた人物です。キャラクターはユニークで、スキンヘッドにヒゲという、一見するとプロレスラーのような容貌をしています。ところが、しゃべりだすと非常にソフトタッチで、しかも知的かつ庶民派ということで、新鮮な魅力があるという声もあります。

私の住むニュージャージー州の中部は、地上波がペンシルベニアの東部都市圏と共通なため、テレビを見ていると、この両派の激しいCM合戦がイヤでも目に入ってきます。オズ陣営は、フェッターマン候補を「危険なリベラル」と叩くネガティブ・キャンペーンに走っている一方で、フェッターマン陣営は候補の庶民的な魅力を訴える演出が多く見られます。(オズ候補に対する批判戦術もないわけではありません)

予想外のフィリーズ進出

そんな中で、メジャーリーグでは、地元のフィラデルフィア・フィリーズが、全くの予想外ながら、低いランキングからポストシーズン戦を勝ち抜いて、ワールドシリーズに進出することになりました。フィラデルフィアは大いに盛り上がっており、28日から始まる野球中継は高い視聴率となる見込みです。

投票直前のタイミングで、地元球団のワールドシリーズ進出という「珍しく地上波に強いコンテンツ」が降って湧いたわけで、これは選挙戦のテレビキャンペーンの主戦場となるのは間違いありません。その場合は、フィラデルフィア都市圏は圧倒的に民主党が強いわけで、フェッターマン候補の自己PRのCMが多くの視聴を稼ぐことで、民主党支持者の投票率が上がる可能性があるかもしれません。

それはともかく、現時点では世論調査の支持率はほぼ拮抗しています。このペンシルベニア州上院選の行方、今回の中間選挙の大きな注目点だと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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