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北欧2カ国のNATO加盟でクルド人勢力はどうなる?
当初トルコは北欧2カ国のNATO加盟に難色を示していたが(左端がバイデンと握手するエルドアン) Yves Herman/iStock.
<NAO拡大にロシアが「猛反発」しないのは、クルド人勢力の扱いがロシアにプラスになるという見方もできる>
ロシアがウクライナに軍事侵攻したことで、北欧の2カ国、フィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟に動きました。この2カ国は、西側同盟の一員として振る舞っていましたが、北欧における西側とロシアという2大勢力の「はざま」において、長い間、軍事的中立(ノルディック・バランス)というポジションを選択してきました。
その2カ国が中立主義を放棄して、NATOという軍事同盟への加盟を選択したのは大きな事件です。それはともかく、今回の2カ国のNATO加盟問題には、大きな謎があります。それは、プーチンが「猛反発していない」ことです。この問題について、1つの仮説から考えてみたいと思います。
まず、2カ国の加盟問題については、簡単には進みませんでした。原因はトルコが猛反対したからです。その理由は、エルドアン大統領がプーチンと「付かず離れず」の外交を続けたいからではなく、スウェーデンとフィンランドの2カ国には、トルコが認めていないクルド人の団体PKK(クルド労働党)系の移民コミュニティがあるからです。
プーチンが自国内のチェチェン共和国の独立運動を認めず、独立派をテロ闘争に追い込み、これを壊滅させたのは21世紀初頭の大事件です。この対立構図と比較すると、エルドアンとPKKの対立は似ていますが、少し違う展開をたどっています。
まずPKKの人望厚いリーダーのアブドラ・オジャランは、逮捕されて厳重な警備が敷かれたトルコの刑務所に収容されています。当初は死刑判決でしたが、トルコは死刑を廃止したEUへの加盟の可能性を捨てないために、オジャランを無期に減刑しています。では、PKK系統のグループは武装闘争を放棄したのかというと、そうではなく、トルコ東部の山岳地帯では武装して実行支配をしている地域があります。
「クルドの独立は認めない」関係国
クルド人全体としては、他にも愛国同盟、クルド民主党などがありますが、こちらはイランとは厳しく対立しつつ、フセイン打倒後のイラクでは、政権に関与しており与党的な位置付けです。イラクの現職大統領であるバルハム・サリフもクルド愛国同盟です。
クルド人の居住エリアは、トルコ、イラク、シリア、イランの4カ国にまたがっています。従って、彼らが独立すると巨大な勢力になるので、この4カ国は「クルドの独立は絶対に認めない」という国策を取ってきました。トルコは、そもそもクルドという民族の存在を否定していますし、フセインのイラクはクルド人に対する化学兵器による攻撃を行いました。アサドのシリア、革命後のイランもクルド人には弾圧を加え続けています。
そんな中で、クルド人の一部は北欧に難民として逃れました。特にスウェーデンとフィンランドでは、数万人単位での定着が見られます。北欧の中でもデンマークではイスラム系難民の受け入れに苦労していますし、ノルウェーでは排外的な運動を刺激したこともある中で、スウェーデンはルター派キリスト教の理想主義の延長で、多様性確保の象徴としてクルド人を歓迎した形になっています。
クルド人の方も、特に知識層がまとまって移民したこともあり、欠点だった男尊女卑の傾向などを改めつつ、コミュニティーに馴染む方向になっていました。さらに、フィンランドの場合も、独特の職人的な社会改良の一端として、さらに一段高い豊かさを多文化の包摂により実現する、その取り組みの対象としているわけです。
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