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アトランタ銃撃事件が、アジア系へのヘイトクライムを誘発する?
では、この事件は「ヘイトクライム」ではないのか、というと問題はそう単純ではありません。事件の衝撃が全米に広がる中で、様々な指摘や議論が始まっています。
1つは、多くのアジア系女性が殺害されたこの事件が、模倣犯を誘発する可能性です。各地の警察やFBIがアジア系へのヘイトクライムに対して、より警戒を強めているのは当然と言えます。
2つ目は、アジア系のコミュニティーにとっては、明らかに「アジアン・スパ」が狙われて、そこで6人のアジア系女性が殺害されたというのは、大変な恐怖だということです。そもそも2020年の春以来、ヘイトの標的となってきたなかで、この事件はその恐怖に重なる形で発生したことは無視できません。従って、人種に対する攻撃という受け止め方は当然とも言えます。緊急声明を出したバイデン大統領、ハリス副大統領は基本的にこの立場です。
人種偏見の犠牲者?
3つ目は、アジア系の女性が、ルッキズムやセクシズムのターゲットとなっているという問題提起です。例えば、この「アジアン・スパ」という存在はその象徴であるというのです。つまり、今回の襲撃の背景には、アジア系の女性一般が、白人男性の性的な欲望の対象にされているという構造があるという指摘です。
2020年に再度活発となったBLM運動を通じて、人種差別とは何かという原則論の議論が進んでいます。例えば、白人警官が黒人男性に激しい暴力を振るうのは、「黒人男性は屈強なので怖い、拳銃を奪われたらおしまいだ」という人種偏見に基づく、構造的な人種差別の結果だという理解です。
同じように、アジア系の女性に対して、白人男性の間に一定程度の広がりをもって、一方的に性的対象にしたいとか、男尊女卑的な姿勢に従順だ、といった偏見が広がっているのであれば、それも構造的な人種差別だという考え方です。6人のアジア系女性は、その犠牲となったということです。
こうした観点に加えて、2020年以来のアジア系に対するヘイトクライムの中で、アジア系の女性は反撃してこない、とか、男性が脅せば言うことを聞くといった、人種全般に対するステレオタイプな見方が、暴力の背景にあるという仮説を立てるなら、今回の事件は一連のアジア系へのヘイトと結び付けて考えられるし、そうすべきだという議論も出てきています。
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