コラム

民主党予備選、穏健派がどの候補に一本化できるかが今後の焦点

2020年02月13日(木)16時15分

7)今後の展開として、大きな軸としては左派と穏健派の全面対決という構図。左派のサンダースは突っ走るだろうが、民主党の過半数を占める穏健派は切り崩せないだろうし、ブルームバーグはサンダース阻止に全力を上げるだろう。

8)穏健派の大同団結シナリオとして、クロブチャーがウォーレンの女性票を吸収した後に、クロブチャーとブティジェッジが共闘するということは十分にあり得るし、そうなればバイデン票もまとめることはできるだろう。場合によってはそこにブルームバーグの資金が投入される可能性もある。その場合はどう考えても国政経験豊富なクロブチャーを大統領候補にする方がバランスはいいという考え方もある。

9)ただし、ブルームバーグは銃規制に強い思いがあり、中西部出身のクロブチャーとブティジェッジがその点でお互いに全面的に共闘できるかは、一抹の不安がある。

10)仮にブルームバーグの資金まで含めて民主党穏健派が共闘するとなると、サンダース派は強く反発して、最悪の場合は分裂選挙となり、結局トランプが漁夫の利を得て高笑いという可能性も。

11)そう考えると、仮にクロブチャーもしくはブティジェッジが旋風の中心となっていった場合には、サンダース本人だけでなく、サンダース支持者も取り込まなくてはならない。そうでないと、表面的には民主党内の一本化ができてもサンダース派が棄権して、ヒラリーの二の舞になる。世論調査では「候補が誰でも結束してトランプを倒す」という意見が圧倒的多数として出るが、ホンネは分からない。

12)ということは、穏健派が一本化した場合に、サンダース派の政策を全否定せずに部分的には取り入れていく必要がある。これは、自由経済と自由貿易の守護神であるブルームバーグには不可能。クロブチャーもしくはブティジェッジが、例えば医療保険は漸進主義だが、大学無償化は思い切ってやるなど、左派との政策協定を柔軟にできれば民主党の真の一本化、すなわち本選勝利の目が出てくる。

現時点では言えるのはこのぐらいでしょう。まったくもって、政局というのはどこの国でも「一寸先は闇」ですが、とりあえず上記のような仮説を持ちつつ、今後の推移を注視していきたいと思います。

1つ驚いたのは、2016年にヒラリーを相手に60%の得票率で大勝したサンダースが、4年後の今回は半分以下の25.7%だったという点です。これはサンダースが苦戦したとか、候補乱立の結果というのと同時に、4年間で有権者の多くが入れ替わっているということも意味しています。学生票はほぼ100%入れ替わっていますし、就職などで転出・転入する人口も非常に多いわけで、過去のデータはあまり当てにならないということです。

もう1つ意外だったのは、2月7日のテレビ討論で大成功を収めたクロブチャー候補が、20%近い得票率まで急上昇したということです。この情報伝播のスピードということでも、今回は2016年よりもさらに変化の激しい選挙戦になるかもしれません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英企業信頼感、1月は1年ぶり低水準 事業見通しは改

ビジネス

基調物価の2%上昇に向け、緩和的な金融環境を維持=

ワールド

米運輸長官、連邦航空局の改革表明 旅客機・ヘリ衝突

ビジネス

コマツの4ー12月期、営業益2.8%増 建機販売減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story